年明け早々、全世界に衝撃を与えたアメリカのベネズエラ侵攻。国際法違反を問う声が各国から上がる中、トランプ大統領はベネズエラに対して再攻撃を示唆するなど、事態は混迷を極めています。今回のメルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』ではジャーナリストの高野孟さんが、トランプ氏の軍事行動を強く批判するとともに、米国による中南米諸国への支配の歴史を紹介。その上で、「アメリカに寄り添い続ければ日本は安全」だとする高市早苗首相の姿勢を疑問視しています。
※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです/メルマガ原題:米軍のベネズエラ侵攻という大愚行から始まった2026年の暗い見通し
プロフィール:高野孟(たかの・はじめ)
1944年東京生まれ。1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。同時に内外政経ニュースレター『インサイダー』の創刊に参加。80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任。2002年に早稲田大学客員教授に就任。08年に《THE JOURNAL》に改名し、論説主幹に就任。現在は千葉県鴨川市に在住しながら、半農半ジャーナリストとしてとして活動中。
狂気の沙汰。米軍のベネズエラ侵攻という大愚行から始まった2026年の暗い見通し
2026年の世界は、米トランプ政権による南米ベネズエラに対する軍事侵攻、マドゥロ大統領夫妻の拘束と米国への拉致、新政権が誕生するまでの米軍による占領と統治の宣言で幕を開けた。このことが象徴するように、どうも今年はロクなことがない年になりそうな暗い予感がする。
衝動的で錯乱的。これが「西半球モンロー主義」なのか
前号で触れたように、トランプ政権が昨年12月に発表した「国家安全保障戦略(NSS)」は、全世界的な安保秩序の維持に責任を持とうとするようなことはもう止めて、西半球の南北アメリカ大陸の範囲内でしっかりと権益を追求していくかのようなことを言っていた。
しかしそのやり方が、これほどまでに衝動的で錯乱的なものであるとは想像外で、米国はこんなことを繰り返しながら滅びの道へとのめり込んでいくのだろう。
もちろん、米国が中南米諸国をこのように扱ったのは初めてではない。それどころか、戦後冷戦期から今日に至るまでCIAによる暗殺や政権転覆、それで間に合わなければ軍隊による圧力や直接の軍事侵攻などありとあらゆる汚い手段を用いて、傲慢にも自分の「裏庭」と認識するこの地域を好きに支配しようとしてきた米国の長い歴史がある。
比較的新しく、今回の件とよく似たケースは、1989年12月の米軍のパナマ侵攻による反米派の独裁者ノリエガ将軍の拉致・投獄事件だろう。ノリエガは1950年代から米CIAの密接な協力者で、とりわけ70年代後半から80年代にCIA長官・副大統領を務めたブッシュ父とは、コロンビアの麻薬をパナマを中継地として米国内に運び込みCIAの秘密資金を捻出する作戦でパートナーとなった。
が、この利権配分をめぐって2人は仲違いし、ノリエガは反米化。89年5月のパナマの大統領選挙で親米的な富裕白人層の代表が当選すると、この選挙結果を無効とし、軍の勢力を背景として独裁体制を敷き、(イデオロギー上ではなくパワー・バランスの駆け引きとして)キューバはじめ中南米の左派政権に接近した。
このため、ブッシュは恐らくノリエガの口から自分の過去の悪行が暴かれるのを恐れたのだろう、陸海空5万7,000人の兵をパナマに送り込んでノリエガを捕捉し米国へ連行した。マイアミで麻薬密輸容疑などで懲役40年の有罪判決を受けたノリエガは、米国とフランスとパナマの刑務所に計22年間収容された挙句、病死した。
マドゥロも似たような運命を辿るのだろうが、1989年のブッシュ父は65歳の働き盛りだったのに対し、今のトランプは79歳で、しかも2期目の就任からこの1年間でめっきり老け込んで、認知障害も進んだと言われているので、マドゥロがどんな目に遭わされるか分かったものではない。
この記事の著者・高野孟さんのメルマガ









