極めて“不適切”な2つの点。文科省「重大事態いじめのガイドライン」改定案を“いじめ探偵”が厳しく指摘

 

「これまでの意見のまとめ」に覚えた違和感

各報道機関のニュースでは、平時における準備や警察との連携、自治体における第三者委員会の予算確保など新たに加わった項目に着目して報じているが、ガイドラインの中で新たに言及された改悪があるのだ。

その部分指摘の前に、まずは、文科省ホームページで確認できる「これまでの意見のまとめ」を見てみよう。

概ね「これまでの意見のまとめ」は広範囲にこれまで起きていた問題を取り上げているもので、全体としてはガイドライン改定に盛り込んだ方が良いだろうとおもわれるものだが、私がこれを読んでいて違和感を覚えたのは「調査委員の第三者性の確保」という項目だ。

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「PTAの役員」が調査員になるという言語道断

PTAの役員が重大事態の調査委員を行う場合、地域の中で新たな対立を生んでしまうのではないかと考えられる。
(↑「これまでの意見のまとめ」より抜粋)

まだPTAの役員を専門委員にする自治体があるのか…委員となる場合の基本的な柱は「専門性」「第三者性の担保」だ。一般の業界でトラブルが発生し、これに第三者委員会を設置して原因追及などの調査を行う場合、「専門性」「第三者性の担保」がないという委員はいない。理由は専門性が無ければ調査ができないし、第三者性が担保されていなければ第三者とは言えないわけで、成立しないからだ。

そこにきて、「PTAの役員」をという専門性が無い者が調査員になるというのは、そもそもで言語道断だろう。一方で、実際にPTAの役員をやっている方が指名されたらどう思うのだろうか。おおよそ「できません」の一択ではないのだろうか。そうでなければ、断れない柵があるか、そもそも無責任な人であると言わざるを得ないだろう。

「えっ、いじめに法律あるの!」と驚いていた民生委員を専門委員にしてみたり、地域の顔役をとりあえずの委員にして、会議で昔話をするというとんでもない事態が起きている自治体がある中だから、こうした非専門の委員がいることが問題に上がるのは良いが、国の施策の会議でこうした意見が出たのは、いかに教育界が第三者委員会を軽く見ているかわかるのではないだろか。

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