極めて“不適切”な2つの点。文科省「重大事態いじめのガイドライン」改定案を“いじめ探偵”が厳しく指摘

 

ちょっとなにいっているかわからない意見も

我々の団体にも他の県から推薦してほしいという依頼がくるが、同じ県内に住んでいるからといって当該自治体の利益を守るスタンスに立っていると見られてしまうのは実態にあっていないと考える。弁護士であれば、自治体を相手に訴訟を起こす場合もあり、住んでいると学校や自治体の利益を考えるようになるから公平・中立でないと思われてしまうのは違う。一般的には、他の県でないと公平性・中立性が保てないということはないので、ガイドラインにもしっかり書き込んでいく必要がある。
(↑「これまでの意見のまとめ」より抜粋)

事実として、県外から第三者委員会の委員を選出してほしいという要望はかなりある。しかし、これには根拠があるのだ。そして地域差がある。例えば、東京や神奈川、大阪など大都市圏の都道府県においては、多くの専門家がおり、自治体からの圧力は大した影響を及ぼさない。一方で、地方になると専門家を見つけるのは厳しいものになるのだ。

例えば、四国地方の事件で、私が地域の専門家に依頼ができないものかと探し回ったことがあるが、いるにはいても隠ぺいをした教育委員会の仕事をしているとのことで断られた。当然、利害関係者になる者に依頼は出来きようもない。数日滞在して様々な会にも当たったし、地元の議員さんに協力を仰いで探したが、同様の事情ですべてダメであった。

つまり、同じ県内だからダメと言っているわけではないのだ。地方であればあるほど専門家となる者が少なく、ここで弁護士さんを事例に挙げているが、自治体の顧問弁護士になっていたりスクールロイヤーになっていたら、利益相反で被害側からの依頼は受けるのは憚られるのではないか。

また、第三者性で重要なのは、事実第三者であるかよりもその担保である。委員がどんなに良い人で、中立で公正な人物であっても、僅か関係性がある場合は、関係性がない専門家を選任すべきであるのだ。

つまり、この意見は前提が各第三者委員会の設置で起きる問題と異なるし、根本は、学校と教育委員会が不誠実でガイドライン違反を侵しまくり、被害側との信頼関係が崩壊して対立関係を起こしているからに他ならない。

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