スピーチやプレゼンの最中に話題が本筋からずれてしまい、そのまま本題に戻れず失敗の憂き目を見てしまうというエピソード、よく耳にするものです。そのような状況に陥るのを避けるために、話し手として「脱線」は厳に慎むべきものなのでしょうか。今回のメルマガ『スピーチコーチ・森裕喜子の「リーダーシップを磨く言葉の教室」』ではスピーチのプロである森さんが、多くの人が脱線により失敗してしまう理由を紹介。さらに森さんが「横道にそれることをむしろ推奨する」とする訳を解説しています。
※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:話の脱線のススメ <横道に逸れることの効果>
話の脱線のススメ <横道に逸れることの効果>
小中学校の授業中に教科書から脱線して先生がエピソードを話してくれた経験、ありませんか。
先生の経験談や過去の教え子のエピソードは成績には関係がない?だからかもしれませんがひたすら楽しんで聞けました。
でもそれは教科書に書いてあること以上にリアルな人生勉強だったように思います。
教科書の内容は誰でも教えても同じような効果を生まないといけません。
でも、先生の個性が出る脱線話には共感が持てますよね。
脱線エピソードがあったからこそ、数学の方程式が覚えられた、なんて人もいるでしょう。
結果的に横道に逸れたことで、その瞬間の「記憶」を強いものにしたわけです。
そんな学校の先生なら問題ありませんが、ビジネスマンの方からは「話が横道にそれてスピーチに失敗した」とよく聞きます。
ふとした瞬間に本題からずれてそのまま話が流れていってまとまらないまま、ぐずぐずで終わる…当の本人、そんなつもりじゃなかったのに、どうしてなんでしょうね?
言葉はアドリブである
スピーチやプレゼンの観点からすると、書くにせよ話すにせよ、言葉というのは相手や環境の影響を受け、反射的に出てくるものだからです。
つまり、言葉はアドリブ。
今、会議内容を音声で録音し、それを文字に自動的にしてくれるシステムがあります。
会議での録音音声を文字で見ると、
え、なにこれ?
と首を傾げるほどに、かなりめちゃめちゃで、そのまま議事録としては活用できません。
実際に聞いていたときは違和感がなくても、改めて文字で見ると、文法や「てにをは」、語順や言葉選びも、びっくりするくらいです。
これ、会議参加者の言語力レベルの問題ではなく、ほとんど全員が、そうなのです。
すなわち、話し言葉は、相当にテキトーなんです。我ら人間。そんなにカッチリ、キッチリ、ちゃんと話していない。
なのに、相手に伝わってるんですから、人間てやっぱりAIよりもず~っと、奥深く、かしこく、寛容ですよね??!
おっと、AIネタに話が逸れそうになりましたが、戻します。
話し言葉は、みんな相当にテキトー。これが人間のリアルな言語コミュニケーションにおける現実です。
なぜテキトーなのか?
そんなにカッチリ、キッチリ、いちいち文法を正しくなんて、話していないから。習慣で、瞬間的に、即興のアドリブで言葉を繰り出して生きているからです。
だから、うっかり横道にだって、逸れる!
今日はこの筋道1本に沿って話すんだ!
と決めていても目の前の聞き手を見るとつい別の考えがふと浮かんできてつい横道に逸れたくなる。
だから横道に逸れるのはダメでもないし、やってはいけないことでもない。
スピーチコーチとしても横道に逸れることを禁止しません。
むしろ、私は、横道は推奨したい!
なぜなら先ほど書いたように、共感力が強い内容になりやすいから。
しかし!脱線すると、多くの人が失敗する。
それはなぜか。
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