コロナ禍以降に増えた在宅ワークに対して、会社が手当を支給している場合があります。この「テレワーク手当」は残業代の単価に入るのか?など詳しいことについて、無料メルマガ『採用から退社まで!正しい労務管理で、運命の出会いを引き寄せろ』の著者で社会保険労務士の飯田弘和さんが紹介しています。
テレワーク手当について
コロナ以降、在宅ワークが増えましたね。
そして、在宅勤務者に対し、“在宅勤務手当”や“テレワーク手当”等の手当を支給している会社も多いと思います。在宅勤務であれば、自宅での光熱費や通信費、文房具代などが掛かります。その費用の補填のために、“テレワーク手当”を支払っている場合も多いでしょう。
ところで、この“テレワーク手当”が残業代単価を計算する際の計算の基礎に含めなければならないのか、悩んでいる会社さんも多いのではないでしょうか。
そもそも、残業代の単価を計算するときは、基本給だけでなく、役職手当や資格手当等の各種手当も含めた金額で計算します。そのため、基本給だけで計算した場合よりも、残業代単価が高くなります。そして、本来の各種手当まで含めて計算した残業代単価と基本給だけで計算した残業代単価の差額が、未払残業代となります。当然、労働基準法違反です。
残業代の単価計算に含めなくていいのは、通勤手当・住宅手当・家族手当など限られた手当だけです。また、ここでいう通勤手当とは、通勤距離や交通費に比例して支給されるものをいいます。一律支給はここでいう通勤手当にはなりません。住宅手当、家族手当も同様で、家賃や家族数に応じて比例的に支給されるものでなければなりません。
以上のことから、残業代単価の計算では、“テレワーク手当”を含めて計算しなければならないことが分かります。しかし、この“テレワーク手当”が実費弁償として支給されている場合、計算に含めなくてもO.K.です。在宅勤務によって実際に掛かった光熱費や通信費の全額または一定割合を補償するものであれば、実費弁償となるので、残業代単価の計算の際に含める必要はありません。
ただし、実費弁償とうたっていながら、実際に掛かった費用を上回るような手当であったり、余った金額の返還(精算)が不要であったりするもの、実際に掛かった費用に関係なく一律の金額を支払うものは、実費弁償とはなりません。そのため、通常の手当と同様、残業代の単価計算の際に含めて計算することになります。
また、“テレワーク手当”が、実費弁償であろうと通常の手当であろうと、どちらにしろ、就業規則等で定める必要があります。特に、実費弁償とするのであれば、実費弁償分の計算方法を明示する必要があります。
もし、御社で“テレワーク手当”の導入を考えているのであれば、以上のことに注意して導入してください。
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