非難の矛先はプーチンからゼレンスキーへと変わった。“クーデター未遂”で露呈、ウクライナ人による「キーウ政権打倒」の動き

 

ロシアが復讐を企てる4つの「裏切り者」国家

このウクライナの3分割がそれなりに達成できたと判断するか、うまく進んでいると判断した場合には、次のステージに移り、ロシアの支配地域と勢力圏を拡げる魂胆のようです。

それはロシアの表現を借りると“裏切り者への復讐”であり、その矛先はバルト三国諸国とモルドヴァに向いていると思われます。

ただフルスケールの侵攻と占領は、現実的にも能力的にも考えておらず、attacks and runs方式を取って部分的な被害を与え、すぐに撤退することで、NATOの本気度を試し、それをまた反ロシア諸国・親欧米諸国に「NATOはすぐには助けに来ない」ことを見せつけ、NATO内での結束を崩し、ロシアに面する東欧諸国(と北欧諸国)のNATO離れとロシアへの“それなりの”接近を後押ししたいとの思惑があるようです。

それらがうまく行くかどうかは分かりませんが、心理的な影響は少しずつ出てきているのではないかとの分析も出てきました。

ゼレンスキーに向き始めたウクライナ国民の非難の矛先

ではウクライナサイドはどうでしょうか?

ロシアによる侵攻直後は、ロシアにその後一方的に編入された地域は別として、ウクライナのintegrityの確保と領土・国土の保全が目的として示されていました。

しかし、戦闘が長期化し、ウクライナ軍兵士と一般市民の犠牲がかなり増加し、家族が強制的に離れ離れにされている責任と非難の矛先が、当初の対ロシア非難から、次第にゼレンスキー大統領とその政権に向けられており、半ば強制的な徴兵(18歳から60歳の国内在住男性の徴兵)というやり方も、ゼレンスキー大統領とその政権への非難の増大に繋がっているようです。

そして対ウクライナ支援の拡大と確保のためという目的を掲げて、軍の最高司令官でもある大統領が外遊を繰り返しているという事実と、それがあまり好ましい成果を達成していないことに対するウクライナ国民とウクライナ軍、そして反ゼレンスキー大統領の勢力からの非難が拡大していることも背後にあるようです。

それが今週、未遂に終わったクーデター事件という形で表出してきており、プーチン大統領が望む通りかどうかは分かりませんが、【ウクライナ国内でウクライナ人によるゼレンスキー大統領とその政権の打倒に向けた動き】が起きてきていることを示していると言えます。

欧米からの支援が滞り、欧州各国では極右勢力の躍進を受けて、対ウクライナ支援の見直し、廃止、または大幅な縮小や停止に向けた動きが加速している中、ウクライナにとっての状況はあまり好ましいものとは言えないように感じます。

頼みのアメリカも、先日合意した支援については8月末までに到着する方向ですでに動いていますが、11月の大統領選の結果が判明するまで一切の追加支援も議論もないとのことですので、非常に心もとないものと思われます。

そしてゼレンスキー大統領の積極的な外遊と訴えかけに反して、残念ながら国際社会の関心はもうウクライナの今には向いておらず、イスラエルとハマスの終わらぬ戦闘とガザにおいて悪化の一途を辿る人道状況、イスラエルが始めようとしているヒズボラとその仲間たちとの“本格的な”戦闘の有無と規模、そしてその影響、新しい戦争の火種が燻りだしたアゼルバイジャンとアルメニア(ナゴルノカラバフを含む)やコソボを巡るセルビア共和国とアルバニア共和国、そしてコソボ共和国の緊張の高まりなどが、相互に飛び火し、一つの大きな紛争として繋がり、歯止めの聞かない大戦争に発展することへの懸念にむき出しています。

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