非難の矛先はプーチンからゼレンスキーへと変わった。“クーデター未遂”で露呈、ウクライナ人による「キーウ政権打倒」の動き

 

具体的な戦争拡大への予防策を持たない国際社会

私もオン・オフで参加した最近の会合でも、すべての紛争を包括的に議論し、相互の影響についての対応について話し合うことが多くなり(個人的にはやっとあるべき姿になったかなと感じています)、一つ一つのケースについて別々の対応について話すこと・協議することが無くなってきています。

イスラエル政府関係者の言葉を借りると、国際的な非難を浴びている中でフォーカスがイスラエルに集中的に向かない状況はラッキーとのことでしたが、今、さらなるフォーカスと支援を必要とするウクライナとしてはあまり好ましくない状況と言えるかもしれません。

ただ、この協議スタイルを採用することで、私が「忘れられた紛争」と呼ぶコンゴでの30年以上にわたって繰り広げられる悲劇(300万人以上の犠牲)やスーダンで2,500万人を巻き込む人道危機と内戦の拡大、エチオピアで繰り広げられるティグレイ紛争、そしてミャンマー情勢への対応と相互作用に再び目が向くようになったことに対しては、私はポジティブな評価をしています。

しかし、見方を変えると、複数の紛争・戦争・内戦などが飛び火し、世界的な戦争に発展しかねない状況が生まれてきており、それを隠し切れないという状況が生まれているということを認めざるを得ないという実情を示しているということでもあります。

今後、もしイスラエル政府が、ネタニエフ首相が宣言するようにヒズボラとの本格的な戦闘に突入し、ヒズボラとその仲間たちが参加し、かつその背後にいるイランの内政が落ち着いたら(新大統領が選出され、新政府が発足したら)、中東発の紛争の広がりに発展する状況が生まれるかもしれません。

そして、ロシアとウクライナの戦いが今後拡大するような事態がタイミング的に重なるような場合には、もう消すすべのない火災のように、一気に周辺地域から世界全体に燃え広がる事態を避けることはできなくなると懸念しています。

紛争調停のグループも、戦争の拡大を好まない国々も、それぞれに考えや方策、戦略を持っていますが、現時点ではそのすり合わせは行われておらず、何かしら具体的な予防策などは成立していない状況です。

上海協力機構という無視できないパワーハウス

いろいろな見方を総合すると、極右化・右傾化を受けてそう遠くないうちに欧州各国とEUは国際情勢の最前線からは脱落し、アメリカも散々かき回した後で、国内政治に追われて、しばらくは国際舞台で活躍することはできない状況になってくるものと考えます。

そうなってくると影響力を増してくるのが、中国であり、交戦中であるにも関わらず勢力を伸長させているロシアであり、そして同時進行の複数の紛争のど真ん中に地理的に位置するトルコですが、これらがすべて含まれる上海協力機構(SCO)の存在感の高まりは決して無視できない状況になるものと思われます。

今週7月3日と4日にカザフスタンのアスタナで開催されているSCO首脳会談では、ロシア・プーチン大統領と中国の習近平国家主席が対面で首脳会談を行うだけでなく、SCOへの公式な加盟を希望するトルコのエルドアン大統領も集い、そしてロシアに忠誠を誓う隣国ベラルーシも10か国目の加盟国となることで、中央アジア・コーカサス地域に一大勢力が、無視できないパワーハウスとして成立することになります。

それが意味するものが何なのかは、現時点では分かりかねますが、今年の夏が終わるころ、国際情勢はどのような様相を示しているのか?

希望と大きな懸念が入り混じる状況が今、私たちの前に存在していて、私たちは恐らくまだその深刻さに気付けていないように感じています。

これから酷暑の毎日を迎えることになりますが、私の紛争調停の日々も非常に熱いものになりそうです。

以上、今週の国際情勢の裏側のコラムでした。

(メルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』2024年7月5号より一部抜粋。続きをお読みになりたい方は初月無料のお試し購読をご登録下さい)

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