退職時、会社と労働者の間で退職する日付のすり合わせをおこなったにもかかわらず、会社側が勝手に退職日を早めてしまった……。無料メルマガ『採用から退社まで!正しい労務管理で、運命の出会いを引き寄せろ』の著者で社会保険労務士の飯田弘和さんはそんな相談を受け、このような退職時のトラブルについてどんな処置がなされるのかについて解説しています。
会社による退職日の勝手な変更
今回ご紹介するお話は、退職にかかわるお話です。
ある労働者が、2023年12月31日での退職を申し出ました。会社は退職の申し出を了承した旨のメールを送ってきました。ということは、会社と労働者との間で、2023年12月31日での退職の合意が成立したことになります。
ところが、会社は勝手に、2023年12月15日での退職とし、雇用保険や社会保険の資格喪失手続きを行いました。そして、労働者に対して、12月15日付で退職になった旨のメールを送ってきました。なぜ、会社がこのような対応を取ったのかは不明です。
いくつか考えられる理由をあげます。
1.月末退職だと、社会保険料が1か月分多く発生するから。
2.少しでも退職日を早めることで、有給休暇消化を全部は消化しきれずに辞めることになり、給与の支払い額が減るから。
3.給与の締め日が15日だったため、給与計算が楽だから。
4.担当者が退職日を勘違いしていたから。
5.労働者への嫌がらせ。
どの理由だったとしても、会社の対応はお粗末で残念な対応としか言いようがありません。
ちなみに、この会社には、この後、労基署の調査が入りました。労働者が、解雇されたと労基署に訴えたのです。
2023年12月31日での退職で合意しているものを、会社が勝手に日付を早めて、12月15日での退職としたのであれば、それは解雇と解されます。解雇なので、解雇予告手当30日分の支払いが必要になります。会社には監督署から是正勧告がなされ、会社は30日分の解雇予告手当を労働者に支払うことになりました。会社のお粗末な対応によって、会社と労働者とのトラブルに発展し、本来は支払わなくても済んでいた解雇予告手当を支払うことになりました。
これがもし、担当者の勘違い・ミスであれば、一般的には監督署の是正勧告は出されません。その代わりに、雇用保険や社会保険の資格喪失手続きの修正が必要になります。それはそれで、なかなか面倒です。
退職時には、会社と労働者との間でトラブルが発生することが多々あります。そして、既に退職した労働者には、会社に媚びを売る必要もなく、会社の言いなりになることもありません。ですから、退職手続きは、きちんと行うようにしてください。
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