8月7日に開かれた決算会見で、NTTドコモの顧客基盤減少に「そろそろ限界」と語ったNTTの島田明社長。なぜドコモはここまで追い詰められてしまったのでしょうか。今回のメルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』ではケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川さんが、その原因を深堀り。さらに同社が現在行っているという「リアル店舗の強化」よりも先に手を付けるべき改善ポイントを提示しています。
※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:NTT島田社長がドコモの顧客基盤減少に「我慢の限界」―ドコモ前田社長の山手線一周視察に「期待が高まる」
NTT島田社長がドコモの顧客基盤減少に「我慢の限界」―ドコモ前田社長の山手線一周視察に「期待が高まる」
NTTが、2025年3月期第1四半期決算会見を実施した。NTTドコモはARPUが前年同期の3,990円から3,910円に下がるなど、モバイル通信料収入が落ちている。
島田社長は「ドコモはずっと顧客基盤を減らしてきた歴史がある。私としてはそろそろ限界。シェアをしっかり守るような対策を打っていかないといけない。マーケティングの強化やユーザーニーズに合わせた対応で顧客体験を上げていく」としている。
そんななか、ここ最近、NTTドコモが強化しているのがリアル店舗だ。島田社長によれば、量販店でのスタッフの強化、ahamoの機種変更をドコモショップなどで行える施策を8月より実施しているという。
また島田社長は「通信品質も大きな要素。前田社長も山手線を回っていて、通信品質を自ら見ている。今度また行くと言っていた。名古屋や大阪に副社長など自ら行ってチェックし始めました。我々も期待が非常に高まっている」と語る。
やはり、いまNTTドコモが抱える最大の弱点は通信品質だろう。8月から始まった「eximoポイ活」も使い放題プランのひとつということで、データを大量に使うユーザーにとっては魅力的なプランだろう。
しかし、昨今の通信品質となると、安定して通信が行えないこともあるため、データ使い放題というお得感が乏しくなってしまう。
データの消費量が落ちるようであれば、eximoなんて契約せずにahamoやirumoで事足りてしまうだけに、結果として、ARPUは減少方向に振れてしまう。
NTTドコモのユーザーは家族での契約や光回線とのセット割引、dカードなどで、相当、囲い込みが効いている印象ではあるが、そうはいっても通信品質に嫌気が差して、他社に流出しているユーザーも少なからずいるのではないか。
実際、前年同期の純増数は47万1,000件だったのが、今期は18万3,000件と大きく減少してしまっている。まさに勢いを失っているというのが現状だろう。
確かに店舗という顧客接点を強化するのは重要だが、一方で、日々、ユーザーとしてスマホを使っての通信こそがドコモとの「顧客接点」だったりもする。
他社のネットワークに詳しい人に聞くと「NTTドコモは4Gから5Gへの移行が上手くいっていない。ローバンドで4Gから5Gに転用し、面を広げないと、5Gのセルエッジばかりできてしまい、通信が一向に安定しない。ドコモの場合、4Gがひっ迫しており、そもそも、これ以上の転用が難しい状態に陥っているので、抜本的に改善するのは相当先になるのではないか」と語る。
顧客基盤の減少に直結しているネットワーク品質の改善がNTTドコモにとって急務なのは間違いない。
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