事業再生コンサルタントとして20年以上の長きに渡り、さまざまな企業を救い続けてきた吉田猫次郎さん。そんな吉田さんであっても断らざるを得なかった、相談者からの依頼もあったと言います。今回のメルマガ『『倒産危機は自力で乗り越えられる!』 by 吉田猫次郎』では吉田さんが、そのような事例を4つ紹介。「寄り添えなかった理由」も併せて記しています。
※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:不正のお手伝いはできない
不正のお手伝いはできない
私は法の番人などではなく、相談者(依頼者)の味方です。
ギリギリのグレーゾーンまで味方するときもあります。
また、不正かどうかの線引き(どこまで目をつぶって、どこから許せないか)は、決して簡単ではありません。
できるかぎり客観的でありたいと思いますが、自分の主観が入り込むことも多々あります。
そのうえで、本題にあるとおり、「不正のお手伝いはできない」という事について書いてみたいと思います。
【事例1】不正融資
これは断じて容認できません。
以前、ある方から、資金調達のコンサルタントを頼まれました。
じっくり内容を聞いてみると、この人は、税理士に頼んで決算書を3つ作っていました。1つは税務申告用のリアルなもの。もう1つは許認可更新のために現預金と純資産を水増しした粉飾決算。そしてもう1つは、銀行借入のために純資産と利益を水増しした粉飾決算でした。
彼の場合、税務署だけは欺いていないけど、許認可関係の役所と、資金調達の際の金融機関を欺こうとしていました。
そして私は、金融機関から千万単位の融資を引っ張るための事業計画書などの作成を頼まれたのでした…。
さらには、この会社の経営実態は惨憺たるもので、このままいけばあと2か月ほどで資金ショート(仕入代金や外注費などを約束の期日に支払えない)に陥るところまで来ていました。
仮にもし銀行借入できたとしても、途中で返済できなくなる可能性が高く、一歩間違えば、借入を手伝った者も共犯扱いにされてしまいます。
そんな依頼でしたので、私は丁重にお断りしました。
【事例2】資産隠し
これも以前、ある方から、「借金の返済を何年も止めています。あと1年で時効です。どうか相談に乗ってください」という話が来ました。
よく聞くと、彼は親から相続した億単位の資産があり、もし債権者にこの資産の存在を知られると、間違いなく差押えされるだろうと思われました。
そして運悪く、彼はある債権者から、裁判所に財産開示手続を申立てられ、正直に開示すると、相続財産を差し押さえられるかもしれないという危機に直面していました。
しかし、私はこのような場面ではお役に立てません。
財産開示手続への回答書にウソを書けば、彼は刑事罰が科せられるおそれがあるし、私もそれを指南・教唆したということで罪に問われるおそれがありますから。
私は相談だけ受けて、「財産隠しのお手伝いはできません」「財産開示手続には正直に答えてください」とハッキリ言いました(そのうえで、「でも正直に財産開示しても100%差押されるとは限らないし、ストレートに交渉すれば遅延損害金ぐらいはまけてくれるかもしれませんよ」と言うくらいの助言はしました)。
とにかく、彼がしようとしていた「財産隠し」や「虚偽の開示」のようなことは
一切協力しませんでした。
文句を言われましたが、できないものはできません。彼のためにもなりません。
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