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甲子園で幾度も流れる京都国際高校「韓国語の校歌」に文句を言わぬ日本人たち

高校球児たちの憧れの舞台、甲子園。夏の全国高校野球選手権大会で今年は何回も韓国語の校歌が流れています。その理由は在日韓国系の学校である京都国際高校が決勝まで駒を進めているためなのですが、それにとやかくいう日本人たちはあまり見かけません。無料メルマガ『キムチパワー』の著者で韓国在住歴30年を超え教育関係の仕事に従事している日本人著者は、そういった日本人の無関心さと韓国で起きたとある抗議を例に挙げて、日本と韓国の隔たり、そして小さくも大きな“変化”について語っています。

京都国際高校の校歌

日本の公共放送NHKで今月17日と19日に韓国語の歌が流れた。「東海 渡って山都の地」で始まる在日韓国系京都国際高校の校歌だ。同校が日本全国高校野球選手権大会のベスト8に続いてベスト4に進むと、慣例に従って競技場で校歌を流し、NHKはこの場面を生中継した。

校歌に出てくる「東海」は韓国基準の東海を意味する。この海の公式の日本名は「日本海」だ。日本の公共放送が自国の領海を他国の基準に従って歌う場面を放映したわけだ。しかし、これに対して日本社会から非難が起こったとか、NHKに抗議が殺到したという話は聞いていない。韓国語が聞き取れないからと見るのも難しい。NHKは日本語字幕に「東海」を「東の海」と、事実上そのまま翻訳して流していたからだ。

京都国際高校の善戦をきっかけにNHKに繰り返し流れる「東海」という言葉とこれに対する日本人の神経質でない(無関心な)態度を見ながら、光復節(クァンボクチョル=韓国での8/15を祝う節)の韓国での出来事を振り返ることになった。

やはり公営放送であるKBSはこの日、イタリアの作曲家ジャコモ・プッチーニのオペラ「蝶々夫人」を流して激しい抗議を受けた。オペラの第1幕に出てくる日本の伝統婚礼の場面に、日本の国家である君が代が背景として出てくるという理由からだ。「光復節になぜ君が代なのか」という視聴者からの非難が殺到するとKBSは「製作陣の手落ち」と急いで謝罪した。

韓国と日本国民の情緒を同じ物差しで評価することはできない。植民地の歴史を記憶する韓国国民は、日本と関連した事案にはるかに敏感で、即自的に反応するのはある意味当然といえるかもしれない。

光復節に日本を背景にしたオペラを流したKBSの無神経さも批判されてしかるべきかもしれない。それでも我々韓国がヨーロッパの巨匠の代表的オペラに「君が代」がしばし出てきたからといってそこまで敏感に反応しなければならないのかは一度考えてみる問題ではないかと考える。

韓国の経済水準がすでに日本に追いつき、何より文化的(K-ポップ、K-映画など)には日本をクリアーしつつあるという世界の評価を受けているという事実を考えればなおさらだ。

朝鮮日報の記者はこう書いている。韓国の文化的・経済的レベルが日本に追いつき追い越しているのかどうかは筆者は確かにはわからないけど、この記者の論点(=光復節にオペラ・蝶々夫人を流したからといって目くじらを立てるなよ、という主張)には全的に賛成だ。

でも多分この雰囲気(光復節に日本のものをやるといったこと)は今後数十年は変わらないだろう。それでも「そうガツガツと神経質になるなよ」という思いを持っている人が韓国人の中にもいるということはこの記事が大手新聞に堂々と掲載された事実からも窺い知れる事実であり、それは筆者が韓国に渡ってきた36年前から見ると想像もつかないほどの大きな変化と言える。

こういううれしい変化があちこちに生じていけば、日本・韓国の関係ももう少しあったかく柔らかいものになるはずだ。小さな変化を積み重ねていくしかない。[朝鮮日報参照]

【関連】ハングル校歌に甲子園が汚された?京都国際初優勝で「選手に罪はないが…」批判が急増。高校野球の「政治利用」めぐり議論白熱

image by: Usa-Pyon / Shutterstock.com

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韓国暮らし4分1世紀オーバー。そんな筆者のエッセイ+韓国語講座。折々のエッセイに加えて、韓国語の勉強もやってます。韓国語の勉強のほうは、面白い漢字語とか独特な韓国語などをモチーフにやさしく解説しております。発酵食品「キムチ」にあやかりキムチパワーと名づけました。熟成した文章をお届けしたいと考えております。

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【著者】 キムチパワー 【発行周期】 ほぼ 月刊

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