特別支援学校に通う障がい者が、卒業後も学び続けるのは容易なことではありません。しかし、コロナ禍によってオンライン化が進むなかで、学びの環境は大きく変わり、整い始めているようです。今回のメルマガ『ジャーナリスティックなやさしい未来』では、学び続けたい障がい者の方々にウェブ上でさまざまな学びのカリキュラムを提供する「みんなの大学校」を運営する引地達也さんが、数年間の活動で大事にしてきた「喜びの共有」という考え方を紹介。「みんなの大学校」で得た知見が、国内に加えてアジアでも注目され始めていて、理論の助けも得ながらカリキュラムを進化させていきたいと伝えています。
理論を整理しながら進む「みんなの学び」のカリキュラム
猛暑が支配した夏が終わりに近づいているが、災害をもたらす台風の報が絶え間ない印象で、地震への警戒も続いている。
みんなの大学校は大学と同様な仕組みを採用しており、現在は夏期休暇中だが、この猛暑や台風の中、全国各地の学生たちの様子が気になる。それもオンラインでつながるこの仕組みが機能したからこそ起こる心配である。あらためて「学び」につながった学生への「心配」というケアが自然発生した事実に、この数年の活動を見る思いがする。
私が担当する「メディア論」「音楽でつながろう」は今年それぞれ7年目、5年目。受講者や支援者・家族の声を大事にした結果、それなりの形にはなっているが、まだまだ最適な形がありそうで、日々探究は続いている。研究者の仲間とともに、学会発表や出版に向けてディスカッションをすると、また違う視点からの分析による発見も多い。
みんなの大学校の前身であるシャローム大学校が集合型で学びの提供を開始した際、最初に留意した点はコミュニケーションを保証することだった。学びを一方的に提供するだけではなく、学ぶ側が今、何を考え、不安を覚えているか、喜びを感じているか、その感情を交流させて豊かな時間を共有することが、学びの場を成立させているという基本方針があった。
この基本方針は、コロナ禍を経て、カリキュラムの提供をオンラインでも行うみんなの大学校にも引き継がれ、今に至っている。オンラインでも成り立つ「喜びの共有」は自然と講義のやり方に影響し、その手法の有効性が研究対象として検討されている。社会構造やエージェンシー等の社会学の視点からの理論づけやコンテンジェンシー理論のような組織運営に関するアプローチで語られる機会もある。
今年、みんなの大学校の活動はオンラインでの国際学会で発表しアジア各国の研究者から関心を集め、東京大での事例発表でも「福祉」「教育」領域以外の研究者から様々なコメントをいただいた。日本メディア学会では、「重度障がい者へのメディア教育」の視点で発表し、好意的な反応に触れた。
新しい取り組みとして、社会が少しずつその必要性を認識し、「誰でも」というインクルーシブな社会に向けた具体的な課題として共有することから始めたいと考えている。
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