「ハァ?」としか言いようのないアメリカのスゴすぎる判例
「あり得ない!」としか言いようのないディズニー死亡訴訟だが、もともとアメリカは、日本人から見れば「あり得ないトンデモ訴訟」には枚挙にいとまがない国である。米国の訴訟事例集から抜粋してみよう。
■股間にマクドナルドのコーヒー挟んで5,800万円
1994年、孫の運転するスポーツカーに乗っていた72歳の老婦人が、マクドナルドで購入したホットコーヒーを股の間に挟んだところ、コーヒーがこぼれて太腿を火傷、マクドナルドを提訴した。48万ドル(当時のレートで約5,800万円)の支払いが認められた。
■自打球が鼻に激突して500万円
ゴルフコースでプレーしていた女性が、打った球が障害物に当たって跳ね返り、自分の鼻に激突したとして、ゴルフクラブを提訴。約500万円の損害賠償が認められた。
■カップルに責任をなすりつけられたディズニー
ディズニーパークでデート中のカップルが、それぞれゴーカートに乗り込んだところ、前を走る彼女が急停車し、そこへ彼氏が衝突。彼女はむち打ち症になり、ディズニーを提訴した。裁判では、彼女の責任が14%、彼氏が85%、ディズニーが1%とされたが、彼氏が「支払い能力がない」と申し立てたため、裁判所がディズニーに損害賠償765万円の肩代わりを命令。
※『訴えてやる!!!』(ローラ・B・ベンコ/アティラ・ベンコ著、永井二菜訳)より
この事例集、どっさり掲載されているのだが、どれもこれも「ハァ?」としか言いようのないものばかり。ゴーカートの判例に関しては、ディズニーが気の毒な立場でもあり、なるほど、こういう事情から「訴訟させない利用規約」なんてものまで編み出したのかと思えてくる。
だが、アメリカのトンデモさは、もっと肥大化している。犯罪者や警察官もガンガン裁判を起こしているのだ。
■落っこちてケガした泥棒に3,000万円
小学校に忍びこもうとした泥棒が、校舎の天窓から転落。泥棒は、「天窓の上を歩くと危険」と注意書きしておかなかったことに過失があると主張して、教育委員会を提訴。約3,000万円の賠償金と、月額15万円の生涯に渡る補償の支払いが認められた。
■囚人ら11人が刑務官を訴えて賠償金ゲット
看守のストライキによって不便を強いられたとして、カリフォルニア州の刑務所に収監されていた猟奇殺人犯が代表となり、囚人ら11人が刑務官の労働組合を提訴。損害賠償として約530万円の支払いが認められた。
■「ちゃんとベランダ直しとけよ!」の警察官
セキュリティー警報を受けて民家に駆けつけ、不審者がいないか調べていた警察官が、ベランダの板を踏み抜いて片足がはまり込み、怪我。警察官は、家主と、ベランダの修理相談を受けていたシロアリ駆除業者を提訴。約4,000万円の損害賠償と、月額24万円の生涯に渡る補償の支払いが認められた。
※『訴えてやる!!!』(ローラ・B・ベンコ/アティラ・ベンコ著、永井二菜訳)より
憲法で保障された公正かつ公平な裁判制度のために、司法が独立性を保ち、国民の権利と自由の守護者たる役割を果たすことが民主主義の原則である──と言うが、アメリカでは、権利と自由がどこまでも認められて、囚人による訴訟も頻発している。
市民の安全を守るために命を張っているはずの警察官が、警戒先の家主を訴えるというのも、職務の意義が崩壊しているし、そりゃ警察に頼るより、銃を所持して自衛したほうがよいとなるのも当然だろう。
陪審員による審理は、経験豊富な裁判官による裁判よりも損害賠償が認められる確率が高く、「カネをとりやすい」という感覚もあるようだ。
福沢諭吉のいう「義に通ずる理のある力=権理通義」でなく、「神が私にお与えになった幸せを追求する権利」はどこまでも膨張していく。
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