【日朝関係】中国の脅威を抑える有効な手段となりうる北朝鮮との国交正常化

© Les Cunliffe - Fotolia.com
 

唯一、北朝鮮を評価できるのは中国に基地を貸していないこと

金正日氏が対中不信を口外したのは一度や二度ではない。その前にも訪朝した米国系同胞に対して「中国は肝心な時に裏切る」と不満を吐露していた。

日本が北朝鮮を唯一評価できるものがあるとすれば、それは中国に基地を貸さないこと、日本海に面した港を軍港として使用させてないことだろう。

中国の東方は、地理的にロシアと北朝鮮に完全にブロックされている。従って、中国は日本海から日本を軍事的に牽制できない。

金正日総書記が急死する4か月前の2011年8月4日、中国海軍訓練艦隊所属の練習艦「鄭和」とミサイル護衛艦「洛陽」から構成される中国海軍の訓練艦隊が東海岸の元山に入港したことがあった。

中国の訓練艦隊の北朝鮮訪問は「中朝友好相互援助条約」締結50周年記念行事の一環であったが、北朝鮮への中国艦隊の寄港は実に15年ぶりのことであった。金英春人民武力部部長を表敬訪問し、また北朝鮮側からは鄭明道北朝鮮海軍司令官や朴載京人民武力部副部長らが中国訓練艦隊を訪れ、交流を深めた。

大連軍港を出港する前に艦隊の指揮官である田中(でんちゅん)北海艦隊司令官は「中朝の軍事関係を一層強化するための重要な外交行動である」とし、元山港に寄港したその日の歓迎宴では「あらゆる試練と風波を乗り越えた中朝親善はなにをもってしても壊すことのできない共同の価値である」としたうえで「両海軍の親善関係を発展させ、東北アジアの平和と安定に寄与する」と語っていた。

日本海に出口のない中国が日本海に面した羅先、清津、元山の港湾を軍港、潜水艦基地として使うような事態になれば、中国との間で尖閣諸島の問題を抱える日本の安全保障にとって由々しきことだ。方角的に日本のどてっぱらに位置するからだ。日本海を共有している北朝鮮を中国に追いやることは、日本にとって安全保障上の見地から決して好ましいことではない。

北朝鮮の核とミサイル問題も含め軍事面で意思疎通のできる場が日朝間には必要だ。その意味では、小泉訪朝時に「北東アジア地域の安定と平和を維持、強化するため」に合意した日朝安全保障協議が拉致問題の煽りを受けてまともに開催されなかったのは惜しまれる。

 

『辺真一のマル秘レポート』 Vol.34より一部抜粋

著者/辺真一
1947年東京生まれ、明治学院大学英文科卒業後、新聞記者(10年)を経て、フリージャーナリストへ。朝鮮半島問題専門誌「コリア・レポート」創刊、現編集長。
≪無料サンプルはこちら≫

KIRIN「まぐまぐニュース!」デリバリー版
まぐまぐ!の2万誌のメルマガ記事から厳選した情報を毎日お届け!!マスメディアには載らない裏情報から、とってもニッチな専門情報まで、まぐまぐ!でしか読めない最新情報が無料で手に入ります!規約に同意してご登録ください!


print
いま読まれてます

  • 【日朝関係】中国の脅威を抑える有効な手段となりうる北朝鮮との国交正常化
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け