韓国と北朝鮮の両国間は現在、非常に緊迫した状況であり「一触即発」だということをご存知でしょうか。今回のメルマガ『宮塚利雄の朝鮮半島ゼミ「中朝国境から朝鮮半島を管見する!」』では國學院大學栃木短期大学兼任講師の宮塚寿美子さんが、その詳しい状況についてメルマガ内で紹介しています。
南北で首脳を名指しで批判 一触即発!緊迫の朝鮮半島
韓国・北朝鮮の南北でそれぞれの首脳を名指しで批判し、より緊迫な状況になった。
まずは、北朝鮮からである。2024年10月4日の朝鮮中央通信は、金正恩朝鮮労働党総書記が、北朝鮮は核強国の絶対的力を確保したとし、韓米が北朝鮮の主権を侵害しようとするなら「核兵器を含むあらゆる攻撃力を動員する」と威嚇した。また、韓国の「国軍の日」(10月1日)記念式典の演説で北朝鮮の核に対し強い警告を発した尹錫悦大統領を「尹錫悦傀儡(かいらい)」と呼び、「核を保有している国の前で軍事力による圧倒的な対応に言及したが、何かまともでない人ではないかという疑いをかけられざるを得ないありさま」と強く非難した。
金正恩氏が尹大統領を名指しで非難したのは2022年7月の「戦勝節」(朝鮮戦争休戦協定の締結日)の演説以来約2年ぶりのことである。当時の演説では、尹大統領を呼び捨てにして「就任前後のさまざまな機会に吐いた妄言と醜態を正確に記憶している」と罵倒していた。
今回のこの金正恩国務委員長の発言は、同月2日に西部地区にある朝鮮人民軍の特殊作戦部隊訓練基地を訪問した際にされたものである。国軍の日の演説については、傀儡が抱えている安全保障への不安と焦りを表したものとし、「極度の愚鈍さと無謀さに陥った敵が、われわれの度重なる警告を無視して韓米同盟に対する過度な信心にあふれ、ひいては共和国の主権を侵害する武力使用を企めば、容赦なく核兵器を含むあらゆる攻撃力を使用する」と断言した。これまでにない強い警告メッセージである。
一方、この発言を受けて韓国軍合同参謀本部は同日の4日深夜、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記が尹錫悦大統領を名指し非難したことに反発し、記者団に「われわれの戦略的、軍事的目標は北の同胞でなく、ただ金正恩一人に全てが合わされている」とするコメントを表明した。軍事作戦を遂行する合同参謀本部が北朝鮮の最高指導者を呼び捨てにし、攻撃目標だと明言するのは異例のことである。
北朝鮮は米韓が金氏の排除を狙う「斬首作戦」を準備していると神経をとがらせてきた経緯があり、南北間の緊張が一層高まってきている。一触即発な状況である。
この記事の著者・宮塚利雄さんのメルマガ
image by: Shutterstock.com