元衆議院議員で、今はTBS系「サンデージャポン」やテレビ朝日系「大下容子ワイド!スクランブル」、日テレ系「情報ライブ ミヤネ屋」などテレビ番組でコメンテーターとして大活躍、そして投資家、経営者としての顔も持ち今もマルチに活動されている杉村太蔵さん(45)。そんな杉村さんが、去る9月25日、まぐまぐよりメルマガ『杉村太蔵メールマガジン ~タイゾーの投資家視点~』を創刊いたしました。政治の裏側に斬り込むのはもちろん、メルマガのタイトルが示すとおり投資家視点で、世間のあらゆる話題を取り上げています。そんな中、メルマガ創刊からわずか2日後に、石破茂氏が自民党総裁選で勝利し、石破政権が発足。元議員として、この「新しい日本の顔」と衆議院選挙はどーなってしまうのか一刀両断していただきました。はたして、タイゾー目線からの「石破政権」の評価は?日本経済の行末は?
石破茂政権、ぶっちゃけどうですか?
──本日はお忙しいところお時間をいただきありがとうございます。まずは、メルマガ『杉村太蔵メールマガジン ~タイゾーの投資家視点~』の創刊おめでとうございます。9月25日に創刊したばかりですが、杉村さんといえば元小泉チルドレンということで、政治の裏側についてもたっぷり書かれているので見逃せない内容になっていますね。まずは、やはり最新の政治の動向についてお聞きしたいと思います。新総裁に選ばれました石破茂首相について、杉村さんはどのように思っていらっしゃるのかなと。ぶっちゃけ、石破さんは「内閣総理大臣の器」なのでしょうか?
杉村:それはもう総裁選で選ばれたわけですし、国会でも指名されていますからね。石破さんには何度もお会いしたことがあります。まだ選挙が終わってないので、いったんは「暫定政権」ですよね。
ただ、最初は「すぐに解散しない」と仰っていたのにあとから急に「解散する」って、言ってることとやることが違うじゃないの?というのが、ここ最近の世間の声かなあと。ここまで早いのは本当に珍しいと思いますね。10月1日召集の臨時国会で実施した首相指名選挙を経て、9日に解散。15日公示、27日投票ですからね。
進次郎さんは「わりと早めに解散する」って仰っていたのでいいんですけど。石破さんは総裁選中、早期解散には否定的でしたからね。正直驚きました。ぶっちゃけ結構、選挙(の結果)は厳しいかもしれないですよね。
──それは、どのような観点から見て厳しいかなと思われたんですか?
杉村:やっぱり、何をやりたい内閣なのか、今ひとつ分からないですね。だいたい、7月までは石破さんは岸田政権で取り組んでいた新しい資本主義について「わからない」とおっしゃっていたんですよ。新しい資本主義がよく分からないってことは、アベノミクスもよく分からないということですよ。アベノミクスと新しい資本主義が分からないということは、この10年やっていた「マクロ経済政策」がよく分からないっていうことなので。さすがに、「よく分からない」ってのは違うんじゃないかと。「自分は(その政策には)反対だ!」というのだったら分かるんですけど、分からないっていうのが、なんぼ何でも表現として違うんじゃないかと。さらに驚いたことに、総裁選が決まった瞬間、今度はいきなり「岸田政権の新しい資本主義を加速する」って発言されたんです。この短期間で学ばれたのかどうかわかりませんが、本当に何を考えているのかさっぱりわからない、この不透明さが石破政権の弱点だと思います。
──投資家でもある杉村さんは不安ですよね。
杉村:投資家の立場としては、この先どうなるのかっていう不透明感が強すぎるので不安ですよね。だから、株価も大きく下げましたし、それは当然だろうなと思う。ところが、ここに来て急に「岸田路線を継承します」という話ですからね。どっちなのか、何がしたいのか。防災庁を作るって仰っていますけど、はっきり言って省庁を作れば台風や地震の災害を防げるかっていうと、そうとも思えないし。株価に関係ないですしね。
今、災害が起きると官邸に連絡室が設置されて、例えば北海道で起きても沖縄で起きても、官邸連絡室からの連絡でいろいろな省庁が対応する。官邸連絡室と防災庁はあんまり変わらないんじゃないですか。今ってすぐ官邸連絡室を作って、それが緊急速報で流れますよね。「連絡室が設置されました」って。今までそれで対応していました。だから省庁ができれば災害が来ないとか、そういうわけではないんですよ。防災庁創設にもかなり異論が出てましたよ。
──やっぱりそういう声が出ているんですね。
杉村:とにかく何をやりたい政権なのか分からない。だから、僕がよく講演で話すのは、有権者として「マクロ経済政策って一体何なのかっていうことをよく理解していただきたい」と思っていて。マクロ経済政策って何かと言ったら、まず大事なことは、今の経済に何が問題なのか、この問題だと思われている日本経済の課題を、マクロ経済政策を使って解決しますと。じゃあ、このマクロ経済政策って何かって言ったら、財政政策と金融政策なんですよ。
もっと簡単に言うと、金融政策は金利を上げる、下げる。財政は税制、税金を上げる、下げる。歳出を増やすのか減らすのか、どうするのかと。財政を積極的に出動させるのか、緊縮財政にするのか。
加えて、最近では「規制緩和」がすごく重要な構造改革なんですよ。伝統的な古典的な教科書には、マクロ経済政策とは「財政政策、金融政策」って書いてありますけど、僕はこれに「構造改革」を入れるべきだと思うんですね。規制緩和というのは、国の成長にも影響してくるから。
それに通商政策も入れてもいいんじゃないかと思うんですね。例えばTPPも議論を起こしました。それらを使って、今の日本経済の問題を解決したほうがいい。
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──たとえば、杉村さんはアベノミクスをどのように評価していますか?
杉村:アベノミクスって分かりやすかったんですよ。今の日本経済で何が問題かというと、デフレ下だとモノの値段が下がる、モノの値段が下がると企業の収益も下がる。企業の収益が下がると、私たちの給料も下がる。給料が下がると、私たちの購買力が下がる。購買力が下がるから、企業はモノの値段を下げる。モノの値段を下げると、企業の収益性と給料が下がる。これがデフレスパイラルですよね。
これを断ち切るために、大胆に金利を思いっきり下げて、そして財政出動させた。まあ、税制に関しては法人税を下げて消費税を上げちゃったから、ここがちょっと痛かったんですけど、逆に規制緩和はそんなに熱心じゃなかったという印象が強いんですね。菅義偉さんは「コロナ対策の政権」だったので、岸田さんになってから「もはやデフレではない」という状況になった。
「新しい資本主義」というのは、デフレ完全脱却に向けて成長と分配の好循環を作っていきましょうと。成長するためには投資が必要ですよね。投資をする分野は、これから日本経済が伸びていく「4つの伸びしろのポイント」がありますよ、と。一つは人への投資、一つは科学技術への投資、もう一つはスタートアップへの投資。最後はGX(カーボンニュートラルと経済成長の両立を目指す取り組み)への投資。この分野がすごく伸びる。だからそこに積極的に投資をしていきましょうと、それを分配するための装置として「新NISA拡大」というのがあった。岸田政権の「新しい資本主義」は非常に分かりやすいんです。
──たしかに、これは分かりやすいですね。
杉村:じゃあ石破さんは何をするんだと思った時に、まったく出てこないんですよね。投資家ってのは一番何が怖いかって言うと、この先どうなるか、その先行きが見えないのが怖いんですよね。と同時に、総裁選で言っていたこととやろうとしていることが人事を見てもはっきりしない。例えば赤沢亮正さんを経済再生担当大臣に任命されましたけれども、赤沢亮正さんは「もう金利を上げるべきじゃない、日銀にもしっかりと説明すべきだ」と。一方で、石破さんは「日銀は独立してるから」と、利上げ容認派だったんですよね。
そういう人が大臣になるから、急激に円高になったじゃないですか。大臣を任命した総理大臣は考え方が全然違う。保険証だって「紙の保険証を廃止する」というのが岸田さんの方針で、それに対して「慎重であるべきだ、不便に思う人もいるだろう」というのが石破さんの考えでした。ところが、任命した平デジタル大臣は「紙の保険証廃止は、どんどんやるべきだ」と。こうやって細かく見ていくと「大丈夫か、この内閣は?」ですよ。
極めつけは村上誠一郎さんという総務大臣、この方はもう安倍元総理を「国賊」とまで言った、徹底的に反安倍政治の方ですよ。「国賊」ってなかなか言わないですよね。野党以上に厳しい辛辣な批判を繰り返した。その村上誠一郎さんを総務大臣にして、財務大臣にはこれまたアベノミクスの大推進役だった加藤勝信さんを大臣にした。本当にこの内閣は一致団結しているのかって。本当に「どういう内閣だ?」と。
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──そうなんですね、もう「バラバラ内閣」ですね。
杉村:こう見ただけでも「大丈夫か?」と言うのが、いま発足してまだ2日しか経っていないんだけど、私の率直な感想です。「今までにない内閣」ですね。ここまで総裁選で言っていたことと全然違う人も珍しい。総裁自らが「しっかり議論をしてから解散すべきだ」と仰っていたにもかかわらず、もう間髪入れずに変えたわけで。戦後最短ですよ、首班指名から解散までの期間は。やっぱり石破さんの政権基盤って、党内の政権基盤はめちゃくちゃ弱いです。だって1回目のとき46票しか入ってないんですよ。国会議員が三百何十人いて、46人しか総理になって欲しいと思ってなかった。まあ、地方票は多かったですけどね。
じゃあもう何が頼りかというと、国民からの支持しかないんですよ。この国民の支持を失うとキツイですよね。一歩間違ったら自公過半数割れも十分あり得るんじゃないかなと。かといって、立憲民主党も単独過半数を取れるほどの力はない。そうすると、自公過半数割れの場合、どこかと組まないと政権が取れない。第1党は自民党、第2党は立憲民主、第3党は維新の会、第4党で公明党、その次は国民民主とかいろいろあるかもしれないけど。
今回の選挙は非常に混沌とした世界が待っていて、もちろん自公過半数割れだったら石破さん退陣ですからね。そりゃそうでしょう、続けられないでしょう。第1党なので恐らくは自民党から総理大臣が出るかもしれないけど、相当いろいろな党と組まないといけないという可能性がある。そうなったら、ますますマクロ経済政策なんていうのはどうなるのかって不透明感が増しますよ。
不透明感が増すから投資家は投資意欲が湧かなくなる。ちょっと様子を見なきゃ分からない。それが今の私の考え方ですね。だから、石破さんになったらもう全て資金を引き揚げるっていう話。結構いろんな人から聞かれますよ。石破さんになって先物がドスーンって下がって、円高になる。あれ、僕は完全に読めてましたから。メルマガに書いて、まさにその通りになりました。
──杉村さんのメルマガを読めば、これから株価や円相場がどうなるかも知ることができるということですね。勉強になります。
※杉村太蔵さんのインタビュー、気になる続きは近日公開予定。今度は、杉村さんの意外な一面がわかるエピソードが満載です、どうぞお楽しみに。
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image by: MAG2 NEWS編集部