中国の侵略行為や圧力を正式に認めようとしないネパール政府
ところがネパール政府は中国と揉めることを懸念し、中国の侵略行為や圧力を正式に認めようとしていません。その背景には中国からの経済支援もあるとしています。
3年前、ネパール内務省の職員、測量士、警察官からなる調査チームが、ヒムラ地区の最も辺鄙で険しいヒルサ村まで足を運びました。中国政府との国境を公式に定めた1960年代の地図を携え、チームは実際の国境が一致しているかどうかを調査したのです。
しかし、チームが報告書を提出した後、その報告書は跡形もなく消えてしまいました。一般市民はもちろんのこと、高官や政治家でさえもその閲覧は拒否され、さらに、その年の地図は機密漏洩につながる可能性があるとして、調査員たちに共有しないよう警告もされたのです。
ニューヨーク・タイムズが入手した報告書の写しによると、調査チームはヒルサ村とその周辺における防御施設や監視設備などのインフラ建設を含む、中国による一連の小規模な国境侵犯を記録していました。これらの施設の一部はネパール国内に位置していますが、その他は両国間の協定により建設が禁止されている緩衝地帯に位置していました。
また、中国国境警備隊は勝手にガンジス川の灌漑用水路を使用し、地元のチベット系ネパール人が家畜を放牧したり、宗教活動に参加することを違法に妨害するということまで行っていたことが明らかになりました。
報告書では、中国が抱くより壮大な地政学上の意図に対するネパールの懸念と、この強力な隣国を怒らせることへのネパール側の恐れについても触れつつ、ネパールと中国には緊急にさまざまな国境紛争を解決する必要があるが、合同査察を含む二国間メカニズムは2006年以来停滞していると指摘していました。
もともとネパールは伝統的に非同盟中立ですが、とりわけインドと強い結びつきにありました。
ここに割って入ろうとしているのが中国で、一帯一路構想により、インド勢力圏からネパールを引きずり出そうとしてきました。今年7月にはネパールに親中派の首相が誕生し、インドも神経を尖らせています。
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