なぜ、NTTドコモは「ahamoの30GB化」という“苦し紛れ”な策に出たのか?

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NTTドコモが仕掛けた「ahamoの30GB化」。スマホ業界に激震が走ったといってもいいこの出来事に対する業界の反応を、今回のメルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』ではケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川さんがまとめています。

NTTドコモ「ahamo 30GB化」にソフトバンク宮川社長「売られたケンカは買う」

NTTドコモが仕掛けた「ahamoの30GB化」はユーザーにとっては喜ばしいものの、スマホ業界に与えるインパクトは大きかったようだ。

ソフトバンクの宮川社長は「日報が上がってこない。『どうしたんだ』と社内で詰め寄ったら、『うちだけahamoに対抗していません』と言われた」という。そこで『売られたケンカは買う』として、やむを得ずボタンを押して、ワイモバイルとLINEMOで対抗値下げを実施したという。

ただ、「行き過ぎた値下げは中長期的に見ると本当にいいのか疑問を感じたが、抵抗してみたいと思った」といい、宮川社長の口ぶりからは積極的な値下げではないことは明らかだった。

宮川社長としては過度な料金競争に対しては強い懸念を示している。

「ソフトバンクにも取引先や社員がいる。昇給も業界全体で考えなければならない。物価の上昇に応じた値上げが当たり前のようにできるマーケットに落ち着いてくれるとありがたい」と本音を漏らす。

中長期的な値下げ合戦によって、業界全体が疲弊すれば、日本の通信市場は大きく衰退する可能性も考えられるとして警鐘を鳴らしたのだ。

官製値下げを実現させた菅義偉氏は最近、通信料金の動向については興味なさそうな、実に穏やかな雰囲気を醸し出しているだけに、宮川社長が言うように「業界全体で落ち着いたマーケット」に舵を切っても良いのかも知れない。

一方で、MVNOにとって、ahamoの30GB化はどう見えているのか。

IIJの勝栄二郎社長は「うちの売れ筋プランは5GBなので、さほど影響は受けていない」としながらも「キャリアがどんどん安い料金プランを出すことは、公平な競争環境から言うと、若干、問題ではないかと思っている。きちんとスタックテストをやっていただきたい」と語った。

今週、行われたNTTドコモの決算会見では、若者のMNP獲得が好調で、その理由として家電量販店やショッピングモールでの出張イベントの強化が功を奏しているという。

ただ、業界関係者は「ahamoは大盤振る舞いなキャンペーンや、店頭での販促による効果が大きいようだ」と語る。

一般メディアは「楽天モバイルの純増が好調だから、既存3社が対抗的にデータ容量を増やした」という報じているが、どちらかといえば、NTTドコモが苦し紛れにahamoのデータ容量を増やしたことで、結果、ソフトバンクとKDDIが対抗せざるを得なくなったというのが実情だろう。

振り返ってみれば、井伊社長時代はリアルの店舗をないがしろにして、お金を使ってこなかったため、ドコモが「一人負け」状態だっただけだったとも言える。

前田社長体制になり、リアル店舗をようやく立て直し、ahamoでえげつないデータ容量アップをしたことで、業界全体が過度な競争に突入したとも言えそうだ。

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日経トレンディ編集記者として、ケータイやホテル、クルマ、ヒット商品を取材。2003年に独立後、ケータイ業界を中心に執筆活動を行う。日経新聞電子版にて「モバイルの達人」を連載中。日進月歩のケータイの世界だが、このメルマガ一誌に情報はすべて入っている。

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