日本人をはじめ、多くの外国人を拘束し出国禁止の措置を取り続ける中国政府。当局はその理由をこれまで発表していませんが、なぜ彼らは外国人に対して「理不尽な取り締まり」を行うのでしょうか。今回のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』では、習近平政権による不当な拘束の実態を詳しく紹介。その上で、中国がこのような暴挙に出ざるを得ない理由を解説しています。
※ご高齢ということもあり、今年3月からメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』の「ニュース分析」コーナーの執筆をスタッフに任せて、自身は「国家論」の連載に集中していた台湾出身の評論家・黄文雄さんが、7月21日に85歳で永眠されました。今後もメルマガは黄さんの思いを継ぐスタッフにより継続されます。
※本記事のタイトル・見出しははMAG2NEWS編集部によるものです/原題:【中国】中国に閉じ込められる外国人たち
「反スパイ法」を恣意的に利用。中国に閉じ込められる外国人たち
● 中国から出られない外国人が急増 米国人だけで100人 習政権が発明「巨大な鳥かご」◇ノンフィクション作家 譚璐美
アステラス製薬の日本人男性が、中国で突然「スパイ罪」で拘束されことは、本メルマガでも何回か取り上げました。彼は帰国直前に空港で拘束され、そのまま帰国できなくなってしまいました。
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中国ではこのような事件がよくあります。それは、日本人だけでなく、アメリカ人、オーストラリア人、韓国人など外国人のほか、中国人でさえ出国禁止になっている人が多いとのです。彼らはなぜ出国禁止なのでしょうか。以下、報道を一部引用します。
■オーストラリア人の場合
最初は外国メディアに対するどう喝の一環だった。18年、北京駐在のオーストラリアABCニュースのマシュー・カーニー記者は、「中国の法律に違反した」としてビザ発給を停止され、10代の娘と共に強制的にビデオ撮影で反省文を読まされた。取材対象の中国人が起訴され、彼は家族と急きょ中国を離れた。
20年に中国とオーストラリアの外交関係が緊張すると、オーストラリア国籍の別の記者2人が出国を制限された。2人の出国禁止は数週間後、外交交渉の末に解除された。
在中国外国記者協会は公開状を発して「大いなる懸念」を表明したが、今やそれが外国人全体に広がり、長期にわたって帰国できない事例が多発している。
■アメリカ人の場合
米国のある人権団体の調査によると、少なくとも100人前後の米国人が出国禁止の対象になっているという。ロサンゼルスのあるビジネスマンは、出張で中国へ行き、取引相手の中国企業とのトラブルが発生。帰国しようと空港へ行ったところ、出国禁止になっていることが発覚した。
中国企業からは、身に覚えのない高額の損害賠償を請求する書類が送られてきた。反論しようにも訴えるべき公的機関がなく、4年間も中国で足止めされている。
行動は自由だが、毎日やることもなく、携帯電話は盗聴され、米国の家族との電話連絡は週に1回5分間だけに制限されている。いつ解決するかも分からず、途方に暮れているという。
■中国人の場合
中国公民の場合はより深刻だ。スペインの中国人権擁護団体「セーフガード・ディフェンダース」の報告(23年12月)によれば、パスポートを没収され、出国禁止の対象になっている人は推定で数十万人に上る。中央官僚、地方公務員、大学教授、弁護士、医師、記者、芸術家、企業家らである。
理由は明らかにされていないが、汚職犯の国外逃亡や、資産の海外持ち出し、政治亡命が疑われたり、国外で対中批判や人権擁護活動を行う恐れがあると判断されたりした人々のようだ。
● 中国から出られない外国人が急増 米国人だけで100人 習政権が発明「巨大な鳥かご」◇ノンフィクション作家 譚璐美
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拘束された理由をまったく公表しない習近平政権
■韓国人の場合
今回、韓国人が初めて逮捕された件を見ると、中国が半導体に関して韓国の高い技術を持つ人材を中国に誘致するため、ある程度自制していた慣例が事実上破られたと言える。改正反スパイ法が施行された初期には、海外の学者や外国メディアは、この法律が中国と関係が良くないとされた日本やアメリカ、イギリス、カナダなどの西側の強国を狙うものと推測されていたが、この予想は外れていた。また、半導体の最先端技術において中国が韓国に対する依存度が下がった影響もあるとみられる。
中国では裁判に数年掛かり懲役10年以上が言い渡されるケースも珍しくない。この為、韓国政府は積極的に交渉に乗り出さなければならない。
● 中国・反スパイ法施行から10年…今も帰国できない日本人も「このままでは誰も中国に行かなくなる…」
多くの外国人は「反スパイ法」で拘束されているといいます。この「反スパイ法」の説明について、改めて、報道を一部引用します。
そもそも、この反スパイ法は14年11月1日の第12回全国人民代表大会常務委員会第11回会議で可決され、施行された。
同法のスパイ行為の定義は、すべての機構、組織、個人によるスパイ行為はもとより、その任務受託、ほう助、情報収集、金銭授受などは、すべてスパイ罪とみなされ、その定義は非常に広範で曖昧だ。
2022年末には改正案が公表され、40条の現行法から71条編成へと大幅に内容が加えられた。
この改正案は、現行法にある“国家機密の提供”に加え、「そのほかの国家安全と利益に関係する文書、データ、資料、物品」を対象に含むと定義し、さらに「重要な情報インフラの脆弱(ぜいじゃく)性に関する情報」もスパイ行為の対象であると規定している。
また、改正案では、スパイ行為が疑われる人物・組織が所有・使用する電子機器やプログラム、設備などの調査権限も規定している。
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簡単に言えば、どうとでも解釈でき、拘束したい人がいたら難癖をつけて恣意的に拘束できるようにするための法ということです。ではなぜ外国人を出国禁止にするのか。それは、中国政府の外交カードとしての役割が強いと言えるでしょう。
これまでに拘束された人々について、中国側は拘束した理由をまったく公表していません。一方、中国側は拘束した人々から企業秘密や技術的なことを聞き出して、中国内の企業にリークすることも可能です。
中国は、こんなことをしなければ国内外の問題を解決できないところまできているというわけです。拘束の対象はビジネスマンには限りません。その家族や留学生たちにまで、恐怖を与えています。
中国共産党のトップとして異例の3期目に入っている習近平氏。習政権は国民にスパイ行為の報告を奨励するなど「国家安全」を極めて重視している。
これにより外国人だけでなく、外国人と繋がりのある中国人も監視されるようになり、その結果、中国ではビジネスだけでなく観光客や留学生などの国際交流においても影響が出ている。
実際、10年前にはアメリカからの留学生は約1万5,000人いたが、2023年には350人まで減っている。
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バブルもはじけ国家の弱体化が急速に進む中国
中国は、経済悪化が回復せず、年に一度のビッグセール「独身の日」(11月11日)でも、庶民の苦しい経済事情が分かる現象がありました。中国では、7日以内だと理由がなくても返品ができるのですが、この制度を利用して、「購入特典」を目当てに商品を買い、特典は返さず製品だけを返品するというのです。それについて、以下、報道を一部引用します。
中国では、オーダーメイドなどの特別な商品以外は、7日以内だと理由がなくても返品が可能だ。特にセール中は、「購入特典」目当ての客が特典だけをもらって商品を返品するケースが後を絶たない。しかも、その返品の配送料は売る側の負担だ。
発送代行業者・謝観林社長:返品率が上がっていて、今は約40%です。だいたい1日に3000~4000ほどの返品があります。
アメリカの高級アパレルブランドは、約340億円を売り上げたが、返品率が95%に達したと中国メディアが報じた。
● 大量返品に悩む業者…“返品率95%”のアパレルブランドも「独身の日」中国経済停滞で“異変”…消費行動にも変化
中国のバブルははじけました。今は、寝そべり族の若者と、少子高齢化社会を象徴する年寄り世代に満ち、国家の弱体化も進んでいます。前述したように、日本人の小学生が路上で通り魔に刺され死亡した事件も記憶に新しいうちに、中国人男性が車で無差別に通行人を轢きまくって35人が死亡するという痛ましい事故も起こりました。
● 中国・車暴走で35人死亡 現場は封鎖され被害者を悼む市民らが献花
繰り返しになりますが、中国にいる、あるいは行こうとしている日本人のビジネスマンや留学生の皆さんは、自身の身の安全を第一に考えて、身の振り方を考えて欲しいと思います。
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※ 本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2024年11月13日号の一部抜粋です。初月無料の定期購読のほか、1ヶ月単位でバックナンバーをご購入いただけます(1ヶ月分:税込660円)。
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