たった1つの切れるカードを失った国民民主党の大誤算
自民、公明、国民3党の幹事長が11日、国会内で合意した内容は以下の通りだ。
いわゆる「103万円の壁」は、国民民主党の主張する178万円を目指して、来年から引き上げる。いわゆる「ガソリンの暫定税率」は、廃止する。
こうして「103万円の壁」を来年から引き上げることに決まった。だが、問題は、178万円にどれだけ近づくかだ。わずかな手取り額アップでは、かえって国民の落胆を招くだろう。
そこを詰めないまま、国民民主党は補正予算案に賛成した。臨時国会で切れるただ一つのカードを失って大丈夫なのか。自民党はそこまで信頼できるのか。不安はすぐさま現実になった。幹事長どうしの合意に「釈然としない」と不満げだった自民党の宮沢洋一税制調査会長が動いたのだ。
自民、公明、国民民主3党の税制調査会長は13日、国会内で税制改正をめぐり協議した。自公は所得税の非課税枠「年収103万円の壁」を2025年は20万円引き上げて123万円にする案を提示した。国民民主は「話にならない」と拒否した。(日本経済新聞)
玉木雄一郎代表(役職停止中)が「X」に次のような投稿をしたのは当然のことだった。
「先日の3党の幹事長間の合意をあまりにも軽んじているのではないか。幹事長間の合意を尊重できないのなら、税調会長間ではなく、直接、幹事長間で協議したらいい。話にならない」
「インナー」と呼ばれる閉鎖性と専門性から、総理でさえその判断に口出ししにくい自民党税調が、財務省とつるんで例のごとく減税の動きの前に立ちはだかった構図だ。
だが、ほんとうに幹事長の意向を無視して、税調が“独走”しているのかというと、それは違うだろう。幹事長との間で役割分担が行われていると見るのが妥当だ。
森山裕幹事長は「103万円の壁」引き上げをエサに融和的な姿勢で国民民主党に接し、補正予算案賛成へと誘導する。宮沢税調会長は実務的な態度で、引き上げ幅をできる限り抑える。石破首相と森山幹事長は、容易に国民民主党の要求に応じられないのを税調のせいにしつつ、世論の動向をうかがいながら“落としどころ”を探ってゆく。









