アメリカ大統領選挙の真っ最中にある朝鮮問題の専門家は「表立っては言えないが、トランプが当選すれば、朝鮮問題は確実に動き、北東アジアの情勢は大きく動く」とある小さな会合で語っていた。
トランプ大統領誕生後の2025年世界政治において、アメリカ国内の移民排斥や関税問題とは別に、ロシアによるウクライナ侵略戦争の停止、さらに米朝首脳会談の実現によって朝鮮戦争の休戦から停戦への歴史的画期の実現さえ現実的になる可能性がある。
この課題が実現すれば、ドナルド・トランプ大統領にノーベル平和賞が贈られるのではないかと識者の間でもすでに話題になっている。
ジャーナリストの高野孟さんは『日刊ゲンダイ』のコラムでこう書いた(12月19日付け)。
〈先週、朝鮮総連の旧知の元幹部と懇談する機会があったので、来年は早々に米朝首脳会談を実現し、その場で金正恩からトランプに「朝鮮半島の和平と非核化を実現しノーベル平和賞をもらおうじゃないか」と持ちかけるべきだと提言した。
〉朝鮮半島の非核化が実現すればいいが、トランプ大統領は北朝鮮の核廃絶ではなく核保有を認めたうえで核管理を打ち出し、さらに朝鮮戦争の終戦宣言を行う可能性がある。
沖縄返還時の核密約を行った佐藤栄作元総理さえノーベル平和賞を受賞したぐらいだから、トランプ受賞もあながちありえないことではない。
日本政府や関係者にとって、トランプ政権で北朝鮮拉致問題が進展するのかどうかに関心がある。
ここで「進展」というのは、「政府認定拉致被害者」など被害者が現れるといったレベルではなく、日朝首脳会談に向けて交渉が進むのかどうか、金正恩総書記にトランプ大統領が何を働きかけるのかという問題だ。
そのためのポイントが米朝首脳会談であり、ワシントンと平壌の連絡事務所開設である。
じつはこの構想はビル・クリントン政権の1994年からあった。
北朝鮮の核開発に対する措置として、クリントン政権は1994年に北朝鮮への攻撃を計画する。
しかし、想定される犠牲者が韓国人・米軍をあわせて50万にも及ぶと推測されたことで、計画は中止となった。
その後の経過のなかで、核抑止のための米朝枠組み合意がなされ、そこに相互の連絡事務所の開設が盛り込まれた。
さらにバラク・オバマ政権の提案で2009年にも開設がささやかれた。
相手国との折衝、情報収集などの必要性があるからだ。
トランプ政権になった2018年にも「部分的な関係正常化」が検討され、連絡事務所が提案された。
国交のない国同士が関係を前に進めるには、水面下交渉、実務者交渉、公式交渉などが必要だが、そのための方法として常駐の事務所(それを「連絡事務所」と呼ぶかどうかは本質的問題ではない)を置くことはプロセスとして必須――(この記事は約12分で読めます ※4,923文字)
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