斎藤知事が行使しなかったリーダーにしか手にできない力
なぜ、最初から「公益通報制度」を使わなかったのか?という声もありますが、これはごく自然なこと。問題が表に出ないまま、握りつぶされてしまうリスクが多分にあるからです。だからこそ「内部告発」という手段に出るしかないのです。
一方で、県議会が設置した百条委員会は、すべての県庁職員にアンケート調査を行い、8月中旬には中間経過を発表し、兵庫県議と弁護士で構成する「準備会」が真偽を調査する第三者機関を設置。今年3月上旬をメドに報告書を取りまとめるとしていました。
知事に再選された直後の20日に開催された百条委員会には、知事会を理由に斎藤知事は欠席。25日には斎藤氏を除く県幹部ら3人に対し、公益通報に関する対応や告発文書に記された疑惑を総括的に尋問するなど、報告書作成にむけて調査は続いていました。
つまり、問題の本質は何一つ解明されていないのに、関係者が命を断つ“事件“が続いているのです。
さまざまなことが今回、報じられています。私自身、いろいろと思うことはあるし、怒りも感じているし、なんとも言えない不気味さもかんじています。
ただ一つだけ言えるのは、11月の選挙戦の時から、SNS上を言葉の暴力が横行し、知事選後はさらにエスカレートしたわけです。これを止めることをできたのはただ1人。斎藤知事です。
再選された際、選挙期間中にSNSでひぼう中傷などが飛びかっていたことを問われ「もともと、能登半島地震のときの真偽不明の情報など、災害時に間違えた情報が流布することは問題だという認識だ」と述べた上で、「ことし7月に有識者会議を立ち上げて、議論していくという方向で検討を進めてきた。有識者会議の議論を見据え、準備できれば条例案を提出すると思う。県民の暮らしを守るため意義がある」とし、条例の制定を検討していく考えを示しましたが、県議などに対する誹謗中傷に触れることはなかった。
20日に県庁で報道陣の取材に応じたときも、「SNSなどによる誹謗中傷はしてはならない」「多くの国民や県民が冷静な使い方をすることが大事」「SNSは理性的に運用されることが大事」と繰り返すだけでした。
「災害時に間違えた情報が流布する」のは確かに問題です。しかし、自分の周りで起きている誹謗中傷にもっと目を向けてくれれば、救われた人がたくさんいたのではないでしょうか。言葉の暴走に歯止めをかけもできたと思うのです。
リーダーである知事の言葉は重たいものです。一人一人に訴える力は、リーダーしか手にできない「武器」でもあります。知事がたったひとこと「百条委員会のメンバーへの誹謗中傷はやめましょう」と言うだけもいいし、「どんな事情であれSNSの誹謗中傷を許さない!」と訴えるだけでもいい。それだけの言葉を力という武器を知事は持っているのです。それだけの権力を持つ立場にいらっしゃるだけに、残念でなりません。
みなさんのご意見、ご経験など、お聞かせください。
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image by : X(@兵庫県知事 さいとう元彦)
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