海外の「避難所」は至れり尽くせり。なぜ、自然災害が多く超高齢化の日本は“100年遅れ”のままなのか?

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大雪から山火事、地震など、毎年のように自然災害が襲う日本列島。しかし、避難所の不便さは100年前と変わらず、他の「避難所先進国」に比べると遅れをとっているのが現状です。今回のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』では気象予報士として『ニュースステーション』のお天気キャスターを務めていた健康社会学者の河合薫さんが、海外の事例をあげながら、日本の避難所がどんな問題を抱えているのかを取り上げています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:ベッドで、家族で、温かい食事を!

プロフィール河合薫かわいかおる
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。

ベッドで、家族で、温かい食事を!

関東甲信では大雪となりましたが、みなさん、大丈夫でしたか?

3日(月)にSNSで事前投稿したように、寒気が関東地方まで南下したあとに南岸低気圧がくるパターンは発達しながら寒気を巻き込みます。

そうなると関東では予想以上の大雪になる。今までやられたパターンは例外なくこれなんですよね。

今回は月曜夕方に気象庁と国土省が共同で会見をしたので、ことなきを得ましたが昨夜から雪が降っている東北地方では自然災害が頻発してるだけに心配です。

特に大船渡の山火事で避難している人たちの健康状態が懸念されます。

災害が起こるたびに報じられるのが「避難所問題」です。

欧米の避難所と比べると「日本ってなんでこんなに遅れているのか?」と悲しくなるほど。超高齢社会のトップバッターでありながら「元気な人仕様」のままです。

1930年11月26日早朝、伊豆半島北部で起きた推定最大震度6の北伊豆地震の写真には、床に布団を敷いて寝る被災者の様子が写っているのですが、100年以上ほとんど変わっていないのが現場です(興味ある人はこの写真をググってみてください)。

一方、海外に目を向けると、ベッドに寝るのが当たり前、プライベートが確保されて当たり前、家族だけで過ごせて当たり前、食事は温かくて当たり前、シャワーとトイレがあって当たり前・・・で、日本の仮設住宅並みの設備を備えている国もあるほどです。

日常の生活に近い避難所を設置することで、肺塞栓症=エコノミークラス症候群で亡くなる人や、高齢者の衰弱を防ぐことが可能です。欧米では災害関連死を事前に防ぐ環境が避難所に整備されています。

“避難所の先進国”と呼ばれるイタリアでは、避難者のための大型テントの中に、簡易ベッドがおかれ、隣との間隔もあるし、外が見える小窓もある。

広場にはシャワーとトイレが備えられたコンテナが並び、給水車や発電機もある。

コインランドリーもあるし、子供の遊び場もある。

すべての設備がユニバーサルデザインになっているので、すべての「人」が使えるように工夫されているのです。

食事はボランティアのキッチンスタッフが作るのですが、感染対策も衛生面も徹底されていて、まるでどこかのホテルのようにスタッフが料理を作ります。

食事は避難者にボランティアスタッフが届けるので、寝ていても「ちゃんと食べる」が徹底されます。

簡易レストランもあるので、みんなで食べることも可能です。

このような支援を行うのが“ボランティアのプロ“です。その数はなんと!30万人です。

運転手、コック、医療関係者などの“プロ“がボランティアスタッフとして登録されていて、地域の防災訓練などもすべてのボランティが参加して行われるのです。国が主導して行うので、日本のように「ボランティアが被災してしまって何もできない」という事態が起こりません。

備蓄も十分に行われていて、国、州、市町村、ボランティア団体で、大規模な備蓄倉庫を持っています。

日本では、専門家たちが防災部署人員や、都道府県の危機管理担当者などを現場の10倍以上に増やし、強化する必要性を訴え続けているのに動きがとにかく遅い。

災害・防災訓練にいたっても、国が責任をもって全国統一の防災訓練が不可欠なのにそれもありません。

政府は「防災庁」の設置に向けて、来年度予算案で関連経費を倍増させ、災害時の避難所での生活環境を改善させる事業などを盛り込む方針を固めています。

しかし、倍増では足りないは明らかです。

なぜ、災害が起こるたびに避難所問題が繰り返されるのか?

災害関連死が後を経たないのか?

大船渡の山火事では、市の人口の12%・3939人が避難生活を強いられています。

津波で「山へ!」と家を追われ、今度はその「山」の災害で家を追われている。

この現実にどう向き合えばいいのか? どう向き合わなければならないのか?

みなさんのご意見や体験など、お聞かせください。

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「自信はあるが、外からはどう見られているのか?」「自分の価値を上げたい」「心も体もコントロールしたい」「自己分析したい」「ニューストッピクスに反応できるスキルが欲しい」「とにかくモテたい」という方の参考になればと考えています。

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