続いて3月3日にはウクライナへの武器供与の一時停止を指示しました。
このウクライナへの恫喝は効き、米国の提示する停戦条件に反対する人は力を失ったでしょう。ウクライナは一枚岩になったのです。
ウクライナは3月11日に米国が提案したロシアとの30日間の停戦案を受け入れる用意があると表明しました。
これでトランプ大統領はプーチン大統領との交渉の足場を固めたのです。
さて今、プーチン大統領は何を考えているのでしょう。
「米国の停戦案には戦争の根本原因の除去がない」と難色を示しています。
しかし注目すべき点は停戦案を完全に否定はしていないという事です。
条件に文句をつけているだけなのです。
その条件交渉、実質的なポイントはクルスク州です。
昨年8月、ウクライナ軍がロシアのクルスク州に侵攻しました。今、ロシア軍は全力で取り戻そうとしています。
なぜ今なのでしょう?
米国・ウクライナ側の停戦交渉のカードには「クルスク州からの撤退」があるはずです。
例えば「ウクライナ軍はロシアのクルスク州から撤退するから、ロシア軍はウクライナのxx地域から撤退せよ」、といった交換条件です。
プーチン大統領は自力でクルクス州を取り戻すことでそのカードを無効化させたいのです。
クルクス州の戦闘の行方は遠からずハッキリするでしょう。その時点で停戦合意の準備が双方にできたという事になります。
こういった視点からみると、停戦交渉は今までのところトランプ大統領の想定内で進んでいる事がわかります。
P.S.
なお、トランプ大統領とプーチン大統領に密約があって共謀してウクライナを蹂躙しようとしている、といった考え方がありますが、それは間違っています。
そのような打診をトランプ大統領がプーチン大統領にすれば、それはプーチン大統領に大きな弱みを握られることになるからです。
トランプ大統領とプーチン大統領はお互いを「敵として信用できる」と感じているだけで「本当の親友」ではないのです。
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