■プラスアルファで使う
というわけで、20代の中ごろくらいから図書館で本を借りることをほとんどしなくなりました。読みたい本があれば、買う。シンプルな原則で生きてきたわけです。
仕事上どうしても参照したいけども、さすがに高くて買えないという本については、そう遠くない場所にある国会図書館関西間で閲覧させてもらうことで対応していました。そういう例外を除けば、ほとんどすべての本は買っていたわけです。
そして、そのポリシーは今後も大きく変わることはありません。図書館に通うようになったから本は買わないでいこう、というのではなく、あくまで本を買う生活にプラスアルファとして図書館を使ってみようという方針です。
■はたしてどんな本を
そうなると、どんな本を借りるのか、という問題が立ち上がります。なにせ基本路線は「買う」なのです。それが決まっている中で、「借りる」本とはどのようなものになるのか。
言い換えれば、自分の読書生活の全体の中に、新しいエリアとして「図書館」が位置づけられるときに、その領域は既存の領域とどんな関係性が樹立されると好ましいのか。それを考える必要があります。
もちろん、「考える」といっても、辞書を繰って机の上で思案するなんてことはしません。それで答えが出るような問いではないでしょう。
そうではなく、実際に本を借りてみることを通して確認するというプロセスです。本を借りて読む生活をすることで、本を買って読む生活にどのような変化が生まれてくるのかを確かめ、そこに起きた変化を分析し、次なる行動を変えていく。そういうことをやっていこうと考えています。
だから現段階はいろいろな本を借りています。ライトノベル、海外の小説、料理レシピ本、自己啓発書、心理学・哲学書、新書、(かなり数が少ない)学術書、日本人の小説……。
基本的には「書店で見かけたときに興味を持ったが、買うには至らなかった」という本や、「普通なら、読む判断はまずしないだろうな」という本に手を出すようにしています。そういう中で、どういうタイプの本ならば、自分の読書生活にうまく溶け込んでくれるのか。それを確かめている段階です。
なんにせよ、知的生産において本を所有していることはきわめて重要です。しかし、読書は知的生産のためだけにあるわけではありません。だとすれば、読書生活の全体において「借りる本」があってもぜんぜん問題ないでしょう。
そんな風に考えを変えて、楽しく図書館を利用したいところです。
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