本当に民主主義の勝利なのか?韓国・尹大統領の罷免が決定した弾劾裁判の中身

Rio,De,Janeiro,,Brazil,,November,19,,2024.,Yoon,Suk,Yeol,
 

昨年12月に「戒厳令」を宣言した韓国の尹大統領の弾劾裁判が決着し、罷免を求める決定が下されました。今回のメルマガ『宮塚利雄の朝鮮半島ゼミ「中朝国境から朝鮮半島を管見する!」』では、韓国・北朝鮮情勢に詳しい宮塚コリア研究所の代表である宮塚利雄さんが、裁判の主な論点などの詳しい内容を紹介しています。

尹大統領罷免-野党は民主主義の勝利と宣う

韓国の憲法裁判所は2025年4月4日、「非常戒厳」を違法に宣布したなどとして弾劾追訴された尹錫悦大統領(以下、尹氏)について、罷免を求める決定を出した。尹氏の弾劾裁判の結果は大方の予想通りだったが、ソウルの知人は裁判官8人のうち2人は保守系だから、場合によっては弾劾無効の裁可の可能性もあるのではないかとも予測された。結果は8人全員一致の意見で「国民主権と民主主義を否定し、国民の信頼を裏切った」と判断され、尹氏は失職した。尹氏の弾劾無効を訴えてきた知人は「ありえない結果」だと呆然としていた。

弾劾審判では戒厳宣布などを通じ、尹氏の行為に重大な違憲・違法性があったかどうかが主な争点となり、尹氏による戒厳宣布や国会への軍・警察投入など5件の行為について、重大な違法性・違憲性が認められるかどうかだった。

1件でも認められれば罷免が決まるとして判断が注目されたが、結果は全てで尹氏の違法行為を認定し、尹氏側の「全面敗訴」になった。尹氏の主張と憲法裁判所の判断を見てみると、まず「非常戒厳」宣布について、尹氏側は「戒厳令は大統領の統治行為」としたのに対し、憲法裁判所側は「宣布を正当化する危機は存在しなかった」。

二番目に「国会への軍・警察投入」について、尹氏側は「秩序維持が目的」であった。これに対し裁判所側は「政党活動の自由、国軍の政治的中立性を侵害」とした。

三番目の「戒厳司令部の布告令」について、尹氏側は「象徴的なもので執行可能性はなかった」としたのに対し裁判所側は「政党活動の制限は、代議制民主主義の原則に違反」とした。

四つ目の「選管への軍投入」について尹氏側は、「不正選挙の疑いがあり確認必要」としたのに対し、裁判所側は「令状なしの捜索は選管の独立性を侵害」とした。

五つ目の「政治家らの拘束指示」について尹氏側は「指示していない。証言は偽証」としたのに対し、裁判所側は「拘束対象に元最高裁長官らが含まれ、司法権の独立を侵害した」とし、尹氏側の主張をことごとく退け、尹氏側の完敗となった。

もっとも、一部の裁定については裁判官8人が全員同じ意見ではなかったようで、裁判官4人は「証人の法廷出頭を重視する『伝聞証拠禁止の原則』について、運用を厳格化すべきか緩和すべきかを巡り対立した。

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