本当に民主主義の勝利なのか?韓国・尹大統領の罷免が決定した弾劾裁判の中身

 

今回、尹氏の『指示』を証言した軍人らの供述調書の採用に、問題があったとの認識が示されたといえる」(「産経新聞」4月5日号)部分もあった。

憲法裁判所の宣告は2025年4月4日午前11時に始まった。この審判は関心の高さから一般傍聴席20席に対しテ9万6370人が応募し、法廷内の様子も生中継された(私も日本のテレビで傍聴していた)。憲法裁の宣告は午前11時に始まった。文炯培所長権限代行は時々、伏し目がちに手元の宣言文を読み上げた。

言い渡しの直前に時刻を「午前11時22分」と確認した後、最後は決定文から目を離し、法廷を見渡しゆっくりと口にした。「主文 被請求人 大統領尹錫悦を罷免する」。聞きなれない韓国語であった。韓国留学中に朴正熙大統領と全斗煥大統領の軍事政権下で戒厳令を体験したが、あまりにもかけ離れた戒厳令騒動であった。朴正熙大統領の戒厳令宣布について、木村幹著『全斗煥』は次のように述べている。

1972年10月17日、朴正熙は突如、「特別宣言」を発表し、この日の19時を期して、国会を強制的に解散すると共に、政党他による政治活動を禁止した。憲法の一部条項が停止されると共に、韓国全土には非常戒厳令が宣布された。朴正熙は進んで11月21日に戒厳令下で国民投票を実施、12月17日には、「維新憲法」と通称される、新たな憲法の成立を宣言した。「維新クーデタ」と呼ばれる事件である(同書 81ページ)

今回の6時間で解除された文民による戒厳令と軍人の下した戒厳令の違いをひしひしと感じている。次期大統領を狙っている野党・共に民主党の李在明代表は野党主導で大統領を弾劾・失職に追い込んだことを「民主主義の勝利」とたたえ、「世界がK民主主義をうらやむだろう」と意気揚々と宣ったというが、「戒厳令」とは何かということを改めて考え直さざるを得なかった。

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