中島聡がAIで「ITコンサルの仕事を奪ってみた」実例。約5分、1ドル以下のコストでYouTube動画を自動生成、「週に2~3本が限度」の人間に出番なし

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著名エンジニアの中島聡氏が、「AIを使った映像制作ができる」ITコンサルタント氏に仕事を依頼した際、「週に2~3本の制作が限度」と言われてしまったエピソードを紹介する。時事ネタ動画を毎日配信したい中島氏は、「最低でも動画一本当たり1~2日の作業が必要」という説明に納得できなかった。そこで試しに、自ら開発した「MulmoCast」で台本・動画を自動生成してみたという。(メルマガ『週刊 Life is beautiful』より)
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです

プロフィール中島聡なかじま・さとし
ブロガー/起業家/ソフトウェア・エンジニア、工学修士(早稲田大学)/MBA(ワシントン大学)。NTT通信研究所/マイクロソフト日本法人/マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。現在は neu.Pen LLCでiPhone/iPadアプリの開発。

淘汰されようとしているビジネス

AIの進化によりさまざまなビジネスが淘汰されようとしていますが、まさにその典型のようなケースに遭遇したので、報告したいと思います。

少し前に書いたように、私はYoutubeチャンネルを開設すべく、準備を進めています。その過程で、知り合いを通じて「AIを使った映像制作ができるエンジニア」を紹介してもらい、ローンチに向けて作業を開始したのですが、すれ違いばかりなのです。

私が「動画制作は、生成AIを使って、可能な限り自動化したい」と言うと、アバターを使ってデモなどを作ってきてくれたのは良いのですが、かなり手作業で行っているようなのです。

最新の生成AI技術の勉強を積極的にしている点は評価できるものの、「どの技術を使えば良いコンテンツができるか」という部分にはあまり興味がないというか、自分の責任ではないと感じているようで、少しがっかりしました。

極め付けが、ビデオの配信の頻度の話になった時です。私が「時事ネタを毎日配信したい」と言うと、「最低でも動画一本当たり1~2日の作業が必要なので、最初は週に2~3本が限度」という返事が返ってきました。

私が当初から「映像制作は自動化したい」と主張し、MulmoCast(編註:マルモキャスト。中島氏が最近ベータ版をリリースしたマルチ・モーダルなプレゼンテーション・ツール)の前身であるai-podcaster(podcastの自動生成ソフト)のソースコードも渡しているにも関わらず、自動化の準備など全く進めていないことが判明したのです。

彼とのやりとりを通じて最終的に判明したのは、このエンジニアも昔からIT業界に存在する「人月工数で稼ぐITコンサルタント・ビジネス」から逃れられていない、という事実です。

私との関係も、彼にとっては「生成AIを使って動画を生成するたびに一本幾らで稼ぐビジネス」でしかなく、自動化はそのビジネスモデルに反するのです。最終的には、私自身がai-podcasterをMulmoCastに進化させて、「映像生成の自動化」を実現してしまいました。

「一般の人には難しいが技術者には簡単」な仕事はすべて消滅する

この件で明らかになったのは、これまで「映像を作る」「映像を編集する」などのITサービスを提供していた人たちの職が根こそぎなくなる、と言う事実です。

IT業界は日進月歩で、一般の人々には新しい技術を使いこなすことが難しいため、そのギャップを埋める「ITコンサルタント」なる職業が存在します。古くはウェブサイト作りから始まり、画像処理、音声処理、映像処理、データ処理など、ITコンサルタントたちは、さまざまな場面でビジネスを行ってきました。

ほとんどの場合、その作業は「一般の人には難しいが、技術者には簡単」な定型作業(創造力を必要としない作業)であり、それほど優秀ではないエンジニアにとっては、悪くないビジネスでした。

AIの急速な進化により、世界中のあらゆる「定型作業」がAIに奪われようとしており、この手の「ITコンサルタント・ビジネス」も例外ではありません。

従来型のビジネスが通用するのであれば、「生成AIを活用したアバタービデオの作成」は、ITコンサルタントたちにとって良いビジネスになったはずですが、これからは違います

MulmoCastを開発していてつくづく思いますが、最近のAIは本当に優秀で、適切な環境さえ与えてあげれば、この手の定型作業はあっという間に、桁違いの安さでこなしてしまいます。(次ページに続く)

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