プーチンが安倍昭恵さんに会った意図
「朝日新聞」5月30日付。
プーチン氏、昭恵氏と面会 安倍氏を「忘れぬ」 対日関係改善模索か
ロシアのプーチン大統領は29日、モスクワで安倍晋三元首相の妻、昭恵氏と面会した。大統領府が発表した。プーチン氏は「彼(晋三氏)に深く感謝している。ロシアと日本の協力発展に対する彼の貢献を忘れることはない」と強調した。
プーチン氏は首相在任中の安倍氏と27回にわたって首脳会談を重ねた。29日の面会は一部が国営テレビで放映され、プーチン氏は昭恵氏に花束を渡して歓迎。昭恵氏がプーチン氏の言葉を聞きながら涙を流す場面も見られた。
実に感動的な場面です。プーチンは、こんなことも言いました。
「彼(晋三氏)の夢は両国間の平和条約であり、彼は誠実に取り組んでいた。私たちはこの道で真剣に前進してきた」
まさに。安倍総理は、「私の代で北方領土問題を解決し、ロシアと平和条約を締結する!」と決意され、誠実に取り組んできました。これは、プーチンの言う通りです。
しかし、私たち日本国民が忘れてはならないのは、「プーチンは、北方領土問題解決に、【誠実に取り組んでこなかった】」ということです。
プーチンは、「領土問題解決には、まず信頼醸成が不可欠だ!」といいました。安倍総理は、「要するに金と技術をくれということだな」と、正しく理解した。それで、2016年、プーチン・ロシアに「8項目の協力プラン」を提示しました。「8項目の協力プラン」とは具体的に
- 健康寿命の伸長
- 快適・清潔で住みやすく,活動しやすい都市作り
- 中小企業交流・協力の抜本的拡大
- エネルギー
- ロシアの産業多様化・生産性向上
- 極東の産業振興・輸出基地化
- 先端技術協力
- 人的交流の抜本的拡大。
のことです。
さらに安倍総理は、2018年、大きな大きな譲歩を行いました。「4島一括返還」要求を取り下げ、「2島返還」にシフトしたのです。「2島返還」は、1956年の「日ソ共同宣言」に記された内容であり、「法的根拠」がある。安倍総理は、「これで、2島は戻ってくる!」と確信されたのでしょう(昔からの読者さんは、私が当時、「プーチンは島を返す気が全然ないですよ」と書いていたこと、覚えておられるでしょう)。
【関連】北方領土を返還する気ゼロ。それでも日露関係を深めるべき理由
日本は、大きな譲歩をした。これに対してプーチンは、どう応じたのか?「新潮社 フォーサイト」2019年3月29日。
「日米安保破棄」が条件「日露交渉」色丹島に見るロシアの本音
今年1月から本格化した日露平和条約交渉は、ロシア側の強硬姿勢で早くも挫折しつつある。
ロシアのメディア『RBK』は3月12日、クレムリンに近い筋の話として、「ロシア政府には日本に島を引き渡す計画はない」と報じた。ウラジーミル・プーチン大統領も3月14日、財界人との非公開会議で、平和条約交渉は「失速した」と述べ、「まず日本が日米安保条約から離脱しなければならない」と強調したと報じられた。
わかりますか。誠実に取り組まれた安倍総理は、大きな大きな譲歩をした。それに対してプーチンの答えは、「まず日本が日米安保条約から離脱しなければならない」でした。
皆さん、こういう経緯があったこと覚えておられますか?こういう経緯を覚えていれば、
「プーチンさんは安倍総理が大好きだった!」
「彼は、安倍総理を忘れていない!誠実な人だ!」
「親日だ!」
「柔道の心を知っている!」
などと言えるはずはありません。経緯を全部知っている私たちにとっては、プーチンは、「日本から金と技術を、なんの見返りもなしで奪いたかった男」に過ぎません。
そう、安倍総理は、誠実に日ロ関係の問題解決に取り組まれた。プーチンは、島を返さず、金と技術をもらいたかった。これは、明らかです。









