税金の無駄遣い?「減反補助金」に国民反発
同時に、日本のコメ農政についても多くの問題があぶり出されるようになりました。そもそも農協は小規模コメ農家を前提として、農家に肥料から農機具まで販売貸し出しを行い、零細農家体制を守ってきました。これにより、産業資本による大規模コメ作は排除されてきました。
これによって、これまでは「ミクロ」の観点からすると農家も農協もそれぞれの地位を守ることができたのですが、「マクロ」からみればコメ生産の減少と非効率により、日本のコメの国際競争力が低下することになりました。
特に、コメを作らなければ減反補助金がもらえるということで、コメを作らない「兼業農家」が増え、コメの生産が年々減少してしまいました。
税金を付加価値生産のためではなく“付加価値を生まないため”に使う「減反補助金」に対し、国民は強く反発しています。
コメの供給不足から「令和の米騒動」を引き起こした農政と農協体制に批判が集中し、今まさに、ここにメスを入れる動きが始まっているのです。
小泉進次郎大臣の「農協をぶっ壊す」で自民の党内対立が鮮明化
批判の多い農協体制にこれまでなかなか手を付けられなかったのは、これが自民党の大票田だからです。
特に現在の石破政権では森山幹事長を筆頭に、農水族が強い影響力を持っているだけに、自民党の基盤を揺るがすことになる農協改革はまず不可能と見られていました。
ところが「令和の米騒動」が発生し、江藤大臣が更迭され、その後任に農水族ではなく小泉進次郎大臣が起用された段階で、自民党内に大きな“台風”が巻き起こりました。小泉大臣が次から次へと打ち出すコメ対策は、選挙に欠かせない農協票を失いかねないものばかり。農水族のみならず、自民党全体が選挙で戦えなくなるリスクが生じます。
ここで連想されるのが、かつて「自民党をぶっ壊す」と言って登場した小泉純一郎氏です。彼は米国の意向により、やはり大きな自民党支持票を持つ郵便局を敵に回す郵政民営化を進めました。結果として、郵便局の支持票は失ったものの、それ以上に国民の大きな支持を得て小泉自民党は選挙で大勝しました。
今回はその子息が「農協をぶっ壊す」の勢いで、ここまでは安いコメの提供で国民の支持を得ています。
このため、自民党内からも小泉大臣にあやかろうとする勢力と、逆にあからさまな批判をする先輩議員や元農水大臣が現れ、党内対立が目立つようになっています。
農水族と言われる勢力は反小泉の姿勢を強めていますが、小泉大臣も「偶然の登用」ではなく、背後には強い支持基盤があります。これも自民党分断の力になる可能性があります。(次ページに続く)









