衆院解散は禁止技。立憲・野田代表が唯一守りたい「協力関係」
野田代表には自信がないのであろう。不信任案を提出し、ダブル選挙に突入したら、昨年の衆院選でせっかく増やした議席を激減させる恐れがある。かりに石破政権が総辞職して首相指名選挙になるとしても、日本維新の会や国民民主党が「野田佳彦」の名を書いて票を投じてくれる可能性は低い。
それだけ、今の立憲執行部には野党をまとめる力が不足しているということだ。
国民民主の玉木代表や、維新の前原共同代表が内閣不信任決議案を出すようけしかけるのも、野田氏が提出に後ろ向きであることを見透かしているがゆえである。彼らもまた、ダブル選挙などやりたくないのだ。
野田代表が不信任案提出をためらう理由はほかにもある。「年金改革法案」の修正合意という自公との協力関係が成立したことだ。むしろこれが最大の要因といえるかもしれない。
野田氏は民主党政権で財務副大臣、財務大臣を歴任した。その生真面目さが災いしたのか、同省の「財政再建」論理にたやすく染まってしまった。首相時代には「社会保障と税の一体改革」を掲げ、社会保障の財源に充てるという名目で消費税増税に道筋をつけたが、それが原因で民主党は内部対立のすえ、分裂・凋落の道をたどった。
野田氏が年金改革法案に強いこだわりを見せてきたのは、自らにとっては最大のレガシーである「社会保障と税の一体改革」が、2012年12月の衆院選で惨敗し、政権を失う結果につながったことへの“リベンジ”を果したいからだでもあろう。
消費増税が「一体改革」の全てのように思われてきたのは、「基礎年金の底上げ」など「本丸部分」に手がつけられなかったからだ。年金改革にそれを盛り込むことは、「一体改革」を正当化するために、どうしても必要だった。
ところが、政府から提出された法案からは、与党案に当初盛り込まれていた「基礎年金の底上げ」策が削除されていた。財源を厚生年金の積立金から流用するという当初案は、将来的に受給額が減額されるのではないかとサラリーマン層の不評を買い、参院選に悪影響を及ぼしそうだったからだ。
野田氏は「あんこがないアンパンのような法案」と強く反発。「あんを入れ直せば賛成する」と、「基礎年金底上げ」の復活を要求した。少数与党として立憲を取り込みたい自公にとっては“渡りに船”だったのか、あっさり元の法案内容に戻して修正案を作成し、自公立の合意が実現。衆議院本会議で可決された。(次ページに続く)









