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中国サイドが警戒するアメリカの2つの象徴的な動き

こうした流れを見ていると、米中関係が確実に改善に向けて動き出しているようにも感じられる。しかし、実態はそれほど単純ではない。相変わらずの一進一退も続いていて、中国側も気を緩めてはいない。

象徴的な動きは2つ。

一つはアメリカとベトナムが結んだ関税の合意だ。

米越が合意した貿易枠組みは、従来46%に引き上げるとしていたベトナムからの輸出品関税を20%に落とすという内容だが、そこに第三国からの積み替え品には40%の関税を課すとの項目が加えられた。日本メディアはこれを「中国を念頭に」と報じたが、意図は明確だ。

米越の合意を問われた前出・商務部の報道官も、「いかなる関係国も中国の利益を犠牲にするような手段で交渉を行うのであれば断固反対する。もしそのようなことが起これば中国は断固として対抗し、自国の正当な利益を守る」と反発した。

そしてもう一つは米下院の動きだ。

国際機関の一つ、国際通貨基金(IMF)への台湾の加入を後押しする動きだ。議会はその環境を整えるための法案・「台湾不差別法案」を全会一致で可決させた。中国の神経を逆なでする行為だ。

議会の動きはトランプ政権の判断とは分けて考えなければならないとはいえ、損失に結び付く話だ。

現状、トランプ政権の台湾への興味は、「台湾有事の抑止」ではなく、むしろ台湾への武器売却だとされる。

中国は、「第2次トランプ政権が任期内に台湾地区への武器売却を大幅に拡大する計画を持っていて、第1次政権時の売却総額の180億ドル(1ドルは約145円)を上回る目標を立てている」と報じたロイターの記事に神経を尖らせている。

ただ、いずれにしてもアメリカから繰り出される多種多様なジャブも、ロンドン合意後の米中の大きな流れを変えてしまうほどのレベルではない。

米中ロの首脳がそろって閲兵式に臨む絵にまさるインパクトはないからだ。

(『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』2025年7月6日号より。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をご登録の上お楽しみ下さい。初月無料です)

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1964年、愛知県生まれ。拓殖大学海外事情研究所教授。ジャーナリスト。北京大学中文系中退。『週刊ポスト』、『週刊文春』記者を経て独立。1994年、第一回21世紀国際ノンフィクション大賞(現在の小学館ノンフィクション大賞)優秀作を「龍の『伝人』たち」で受賞。著書には「中国の地下経済」「中国人民解放軍の内幕」(ともに文春新書)、「中国マネーの正体」(PHPビジネス新書)、「習近平と中国の終焉」(角川SSC新書)、「間違いだらけの対中国戦略」(新人物往来社)、「中国という大難」(新潮文庫)、「中国の論点」(角川Oneテーマ21)、「トランプVS習近平」(角川書店)、「中国がいつまでたっても崩壊しない7つの理由」や「反中亡国論」(ビジネス社)がある。

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