後退する景気の引き潮にさらわれるかのように、次々と私たちの手からこぼれ落ちてゆく「当然」であったはずの日常。そんな中にあって、ついに医療を受ける機会までもが失われつつあるようです。今回のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』では健康社会学者の河合薫さんが、2025年の上半期に医療機関の倒産件数が過去最高ペースを上回ったというショッキングな現状を取り上げるとともに、その原因を解説。さらにこの事実を前にした私たち国民が、真剣に考えるべき問題を提起しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:病院が消える日
プロフィール:河合薫(かわい・かおる)
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。
ここまで来てしまった日本のジリ貧。病院が消える日
このままで日本、大丈夫か?そんなニュースが相次いで報告されています。
2025年上半期の医療機関(病院・診療所・歯科医院)の倒産が35件となり、過去最多となった24年(通年で64件)の上半期(34件)を上回ったことがわかりました。
「病院」9件、「診療所」12件、「歯科医院」14件で、いずれも過去最多。負債10億円以上の倒産も4件ありました。
ことし3月、日本医師会と四病院団体協議会、日本慢性期医療協会、全国自治体病院協議会は、賃金上昇と物価高騰で経営状況は著しく逼迫しており「ある日、突然、病院をはじめとした医療機関が地域からなくなってしまう」と訴えていたように、極めて危機的な状況です。
また、全国に42ある国立大学病院の約6割で、経常損益が285億円の赤字直面していることがわかりました。
「病床(ベッド)の稼働率は9割、それでも1病棟を閉めるしかない」
「耐用年数をゆうに超えた医療機器を使っている。ミスが起きたらおしまい」
「とにかく経費削減。白衣の配布もやめた」
など、耳を疑うような窮乏ぶりで、「大学病院がなくなるかもしれない次元の問題」になっているのです。
いずれの病院も経営を圧迫しているのが、医療機器の価格、人件費(残業代)、入院患者の給食費や光熱費などの高騰です。診療報酬はそれらの上昇分をまかなうにはほど遠いレベルなので、病院側が負担するしかない。
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