玉木にも神谷にも“敗北”。衰退の一途を辿る明日しか見えぬ野田立憲「参院選の敗因」を総括する

 

「トランプはいつも怖気づいて逃げる」をなぞったかのような石破

だが、彼は立たなかった。それどころか、党内基盤が弱小な自分がそういうところに飛び込んで返り血を浴びることを避け、肝心な問題から逃げまくった。

典型が「政治とカネ」の問題で、自民党の中にいくら強い抵抗があったとしても、公明党や立憲民主と組んでここで一気に「企業・団体献金の一切禁止」にまで踏み込めば、それだけでも石破は英雄扱いされただろう。

細川護熙元首相らが繰り返し表明してきたように、企業・団体献金が中途半端な形で許容され、さらに税金による政党助成金で補う制度まで作られてきたのは、1993年に本格化した政治改革議論の中で、まだ個人献金だけで政党活動が支えられるだけの市民的な成熟が達成されていないこの国の実情では残念ながらやむを得ない、いずれ見直すべき暫定的経過措置だと考えられたからである。

それは当たり前で、個人には選挙権があるが企業・団体にはなく、その執行部が組織全員の合意なしに資産の一部を特定政党に献金することなどできるはずがなく、もし強行すれば成員の「政党支持の自由」の侵害となるばかりか、定款などに定められた設立目的以外への支出として「背任」に問われる危険さえある。

このようなことは93年頃に国会内外でさんざん議論されたことだが、自民党にはそれを正しく継承しようとする気風はなく、逆に、パーティー券の20万円未満の収入は政治資金報告書に記載する義務がないとされている法の抜け穴を悪用して派閥と政治家個人が闇資金を蓄えるという奇策まで編み出した。

それが明るみに出て国会で取り上げられ、実態解明が叫ばれたものの、石破は、(判明しただけでも)5年間で6億7,500万円という最大の闇資金の規模を誇った安倍派と全面対決になることを避け、逃げた。そうこうするうちに安倍派は、参院選目前の6月25日、政治団体としての解散を届け出、証拠は完全に隠滅された。

野党側でも、例えば国民民主が連合労組から資金を貰い、その見返りに労組幹部OBの比例候補に指定席を用意するなどの取引に応じていることもあって、鋭い追及はなく、今度の選挙でも大きな争点とはならなかった。

が、自民ばかりでなく公明も加担し、野党がムニャムニャしているこの有様は、人々の間に既成政党に対する何とも言えない不快感を与えた。公明党幹部が「結局、ふたを開けてみたら政治資金の問題が大きかった」と語っていたが(21日付毎日)、それは、問題をうやむやにしようとする自民、それを知りながら平気で自民党の「裏金議員」を推薦した公明という、国民をバカにし切った与党の驕りが国民には見抜かれていたということだろう。

このことに象徴されるように、石破はよろず、戦いを避けた。トランプ米大統領は、その出鱈目と言っていいその日の気分次第の関税政策について「TACO(Trump Always Chickens Out=トランプはいつも怖気づいて逃げる)」と嘲笑されているが、その真似をしているかの石破は「IACO」というわけである。

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