安倍長期政権への道を履き清めた張本人を党首に据えた立憲民主の終焉
与党がそんな風であれば、それこそ野党第一党の出番で、積年の「安倍政治の害毒」の浄化責任者として名乗りを上げなければならなかった。
しかし、立憲民主は、政治資金の問題だけでなく、集団的自衛権の解禁、防衛費の増大と米国製兵器の爆買い、アベノミクスの破綻など、どれをとっても「一部容認、一部批判」という程度の、昔の民社党を彷彿とさせるような是々非々対応で、到底、自民党に取って代わって政権を担うだけの構想力を示すことができない。
それもそのはずで、本誌がそれこそ2012年秋の野田政権末期から一貫して言い続けているように、野田は自民党の「トロイの馬」であり、その時にやらなくてもいい――と言うか、やれば負けるに決まっている総選挙を安倍にプレゼントして民主党政権を崩壊させ、安倍長期政権への道を履き清めた張本人である。その彼が2024年9月に枝野幸男を破って立憲民主の代表に就いたことで、この党の終わりがすでに始まっていたのである。
今回の選挙が何を意味したかを示す最も印象深い数字はこれである。
【表1】比例代表党派別得票・獲得議席

見る通り、立憲民主は昨秋衆院選の時には、自民ともう少しで拮抗するかの文字通り野党第一党であったというのに、今や国民民主、参政に次ぐ野党第三党にすぎない。
もちろんそれは、自民も立憲民主も共に「脱安倍化」を通じて日本をこの行き詰まりから救う手立てを競い合うという本質的な課題を担えないでいる中で、ポピュリストそのものである参政と国民民主が殴り込みをかけ、その一瞬の隙を突くかの奇襲にやられてしまったというだけのことである。
しかし立憲民主はじめ他の既成野党が気圧されて、それぞれに消費税の廃止や減額を公約して有権者の歓心を買おうとし、ついには自民までもが消費税を下げずに「給付金」の方がお得ですよとその輪の中に入って行き、こぞってポピュリズム合戦を繰り広げる有様となった中では、元々のポピュリスト政党が強いのは当然である。
政治はもちろん、政党があるべき国や社会の姿を理念として描き上げながら、それを実現していくための政策手段を明示して大衆の支持を得て実現しようとする営みである。
しかし、そうした体系だった理念も政策も示すことなく、目先の「ちょっとお得な」対策だけをニンジンのように振り回して一時の支持を得ようとする刹那主義がポピュリズムの最大特徴で、その両者は峻別しなければならない。
ところが今回の選挙では、立憲民主が理念・政策の構想力と説得力で軽々しいポピュリスト的攻撃を跳ね返すのではなく、逆に自分の方がポピュリスト的な次元に下っていってそこで勝負しようとして負けた。こんなことではどこまでいっても立憲民主が野党第一党に返り咲くとはなく、衰退の一途を辿ることが予想される。
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