安倍晋三政権から続く大問題。北朝鮮による拉致問題の「家族会」や「救う会」が石破政権にも懐疑的な理由

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歴代政権が目標に掲げるも、遅々として進まぬ北朝鮮による拉致問題の解決。そんな中にあって石破首相が開設を構想する平壌への連絡事務所を巡っては、各政党や当事者家族の間で大きく意見が割れているのが現状です。今回のメルマガ『有田芳生の「酔醒漫録」』では著者の有田芳生さんが、拉致問題の「家族会」や「救う会」が石破政権に懐疑的な理由を紹介。さらに問題解決への一番の問題点として「連絡事務所への理解」を上げその理由を解説しています。
※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです/メルマガ原題:北朝鮮に連絡事務所を置く構想への無理解

北朝鮮に連絡事務所を置く構想への無理解

北朝鮮拉致問題がすっかり風化してしまった。そのためもあるだろう。「この暗澹たる思い」「“拉致”救出へ意思を示してほしい…」という対談があったことなど、ほとんど知られていない。北朝鮮による拉致被害者家族連絡会(「家族会」)の横田拓也会長と飯塚耕一郎事務局長の対談は『正論』(2025年3月号)に掲載された。

横田氏は岸田文雄政権で日朝交渉が進展することを期待したが、退陣したことで「事実上これまで積み上げてきた全てが振り出しに戻ってしまったんじゃないかという思いになりました」と嘆いた。それに対して飯塚氏は石破茂政権になって「解決する意思があるのかどうか」「振り出しよりもかなり後退したように思える」と悲観的だ。

岸田政権で水面下の接触があり、北朝鮮側からも金与正副部長から交渉に肯定的なコメントが出ていたものの、それが一転否定されてしまった。「振り出し」というのは、石破政権になって表立った動きが見えないからである。実際には自民党元議員や政権中枢にルートがあった脱北者の動きはあり、石破総理への報告もなされている。だが交渉の具体的な進展には結びついていない。

飯塚氏は対談のなかで「五月(有田注、2024年)にはウランバートルで日朝が接触したという報道がありました」と語っている。これは『朝日新聞』の報道を指すと思われる。記事は「東南アジアの主要都市」としたが、実際にはタイのバンコクだった。モンゴルのウランバートルではない。日朝交渉ではしばしばウランバートルの名前が上がるが、いまや日朝交渉の鍵を握る都市ではないと在京の北朝鮮筋は断言する。

家族会」や「救う会」が石破茂政権に懐疑的な理由がある。横田氏は対談でこう語っている。

石破氏の本来的なモチベーションの原点はもしかすると総理の立場で考えたことではなく、一議員の時代に考えたことに過ぎないのかもしれませんが、北朝鮮の連絡事務所、合同調査委員会を設置して拉致問題を解決しよう、といった手法を私たちは望んでいないと(有田注、メディアの前で)ハッキリいいました。

飯塚氏は石破総理への嘆願書(24年12月9日付け)で「政府として動きが見えない」と不満を述べたという。それに対する回答は「大局観を持って率直に両国が話し合うことが極めて重要だ」という内容だった。飯塚氏はその文書で2024年10月に拉致対策本部の事務方から「総理や政権などにご不満や批判、要望があれば、お伝えいただけますか」と連絡があったことにも不審を抱いたという。

こうした事実が明らかになったこともあり、拉致対策本部の福本茂伸事務局長は就任わずか2年で退任した。その前任の石川正一郎事務局長の在任期間は9年だったから、それを基準にすれば異例である。いずれも内閣の参与に就任した。ところが7月31日付けで2人とも退任した。林芳正官房長官によると、本人からの意向だという。

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