昨今、メディアで頻繁に報じられている「代引きトラブル」を巡る被害。2023年4月の時点で国民生活センターが注意喚起を行っていますが、被害者からの相談は急増の一途を辿っているといいます。今回のメルマガ『詐欺・悪質商法ジャーナリスト・多田文明が見てきた、口外禁止の「騙し、騙されの世界」』では著者の多田文明さんが、代引き詐欺の「システム」とトラブルが増え続ける要因を解説。その上で、かような犯罪を防ぐために求められる対策を提示しています。
※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:代引きトラブル急増の背景には何があるのかと、だまし放題の状況の代引きトラブルをなくすために必要なこと 窃盗目的で近づく不用品買い取りを装う犯罪グループ 何に注意をすべきか
代引きトラブル急増の背景には何があるのか?
通販サイトで申し込んだ商品が代引き配達で届き、宅配業者にお金を払って、商品を受け取ってビックリ!注文したものとは違う「偽物」や「粗悪品」が入っていたという事例が後を絶ちません。
これは今に始まったことではありませんが、今年に入って急増しています。
● 代引きトラブル急増 背景に発送代行業者の存在 物流のブラックボックス化 私たちは何に注意をするべき?
国民生活センターの相談事例については記事にも書きましたので、ご参照頂ければと思います。
被害の多くは、SNS上に偽の通販サイトの広告が大量に出て、そこから誘導されています。ネットの広告審査の甘さはこれまで指摘してたことですが、もう一歩進んで、なぜこれだけだますような広告を詐欺的グループが出しているのかに、メスを入れたいと思います。
それは「広告を出せば、だまされる人がいる」ことはもちろんなのですが、もっと根本に原因があると考えています。
宅配業者へ払ったお金を「だまされた」と思っても、消費者は取り戻せません。その理由は、宅配業者の先に、商品を送ってきた「依頼人」である発送代行会社がおり、そこに商品代金を渡す必要があるからです。商品の伝票に載る「ご依頼主」の覧に業者名が書いてあります。
では、そこに連絡をして返金してもらえばよいと思うかもしれませんが、ここにいくら電話をかけても通じないのです。これではお金は取り戻せません。
また、偽物を送り付けるような悪質な販売サイトから消費者のもとに荷物が届くまでに複数の発送代行会社が介在している可能性もあり、複雑な流通の状況になっている点も見逃せません。
当然、販売サイトに連絡はつながらない上に、発送代行会社にも連絡がつかないのでは、手の打ちようがありません。悪質な通販サイトの側にとって、この状況はだまし放題ということになります。
だまし放題の状況の代引きトラブルをなくすために必要なこと
国民生活センターによると、宅配事業者は「発送代行事業者などの先にいる事業者などを把握する義務はない」とのことで、法的な不備も、今のトラブル増加に拍車をかけているように思います。
それに、発送代行事業者が詐欺的な商品だけを扱っているわけではなく「多くの取引を行っている中に、詐欺的な販売サイト運営事業者の商品もある」ということで、この辺りはブラックボックスになっています。
本当に、代引きトラブルをなくそうとすれば「荷物を消費者に届けてお金を受ける業者の側が、その先にいる発送代行事業者などの身元をしっかりと確認する」ことは必要です。
事前確認の厳格化がないために、結果として宅配業者も消費者トラブルを起こしている、加害行為の一端を担ってしまってることになります。その意識を強く待ち、流通にかかわる業者が審査基準を設けるなどの本気の取り組みが必要です。もしそれが業界としてできないのならば、法律によって、しっかりとした規制を行わなければなりません。
法的な網がないことをいいことに、悪質な販売サイトが発送代行業者を使い、さらに宅配業者を通じて偽物が届けられることで、多くの方が被害に遭っているわけです。その状況につけこむように、審査の緩いSNS上に次々に、悪質業者が詐欺的広告を出すという構図が長く続いているのだと考えています。
この状況を打破するためにも、法整備を含めた議論が求められます。
(この記事はメルマガ『詐欺・悪質商法ジャーナリスト・多田文明が見てきた、口外禁止の「騙し、騙されの世界」』2025年8月28日号の一部抜粋です。続きは、ご登録の上お楽しみください、初月無料です)
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