「こども食堂」の名付け親は、なぜ看板を下ろしたのか?日本の貧困問題が抱える社会的ジレンマ

 

貧困の最大の問題は「普通だったら経験できる機会」がはく奪されてしまうこと。

教育を受ける機会、仲間と学ぶ機会、友達と遊ぶ機会、知識を広げる機会、スポーツや余暇に関わる機会、家族の思い出をつくる機会、親と接する機会……etc。

こういった幼少期の様々な経験は全て、80年以上の人生を生き抜く「リソース」獲得の機会です。なのにそれを手にできない子供達がいる。低所得世帯の子供はそういった機会を経験できず、進学する機会、仕事に就く機会、結婚する機会など「機会損失のスパイラル」に入り込んでしまうのです。

経済的に困窮している世帯の子どもと、困窮していない世帯の子どもの間の教育格差は、10歳ごろから偏差値に現れ、その差はそれ以降も埋まることがないとの分析結果もあるほどです。

学力の低さから進学をあきらめると、仕事も雇用形態も限られてしまいがちです。

貧困家庭で育った人が、就いている主な職業は非正規雇用が多い傾向が認められていますし、生活が苦しく、いくつも仕事を掛け持ちしてる人も少なくありません。

非正規の問題は繰り返し取り上げてきました。しかし、問題は一向に解決されずこどもの就労問題にも引き継がれている。貧困の連鎖を断ち切るためには、就労支援や教育機会の均等化を包括的に進めていく必要があるのに、その動きは高校無償化という耳触りのいい政策により、ますます置き去りにされてるように思えてなりません。

近藤さんが「こどもの就労問題」について話した内容を以下に掲載します。

「子ども食堂を始めて間もない頃、企業のCSR(社会貢献)担当の人たちが『何か手伝いたい』とここに来たことがあります。でも私は、企業がやるべきことは子どもが大人になった時にちゃんとした仕事を準備することだと思っていました。だから『応援して欲しいのは子ども食堂ではなく、子どもたちの就労です』と伝えました」

ーーー(朝日新聞「(インタビュー)「こども食堂」看板やめます 「気まぐれ八百屋だんだん」店主・近藤博子さん)

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