嘘ではないが壮大なデマ。「ブルーベリーは目にいい」の真相を調べて行き着いた“ガセネタの出どころ”

 

脳内に残り続けた「ブルーベリーは目にいい」という主張

典型的な誇張と思い込みの連発としか感じられないのだが、ダメ押しするかのように、著名なプロレスラーの親族が「元気ですかーーっ!」と登場して、ブルーベリーを褒めたたえるので、会場はものすごい高揚感に包まれていた。

効能が称えられたあとは、販売面で大貢献している「会員」らが次々と登場。「平凡だった自分がいかにビッグになれたか」を語りつくしていた。

「とにかくすごいビッグイベント」という勧誘に騙されて、横浜アリーナまでのこのこ来てしまった私たち「非会員」には、完全なる無の表情の人あり、疲労感で失笑している人あり、とりあえずパラパラと拍手してみる人あり、のめり込んで聞いている人あり、反応はいろいろだった。

その後、ゲートを抜けて会場を出るまでに何度か勧誘攻勢を受けた気はするが、うんざりし切っていたこと以外はあまり記憶にない。私を誘った知人とは、それ以来、縁が切れた。

このイベントで聞いた話は、すべて誇張証言かウソだったとわかっているのだが、ただ「ブルーベリーは目にいい」という点だけは、1点の真実のように思えて脳内に残り続け、その後の人生で、ブルーベリーに対する好感度を高めることになった。

実際、少しの渋みとつぶつぶ感のある甘酸っぱい味が好きだし、濃い紫色をした小さな果実は、見た目も希少なものに感じて魅力的だ。ジャムと言えば、圧倒的にブルーベリー派である。

さらに、「ブルーベリーは目にいい」をアピールするサプリメントは、現在まで複数の健康食品会社から販売されており、スーパーやドラッグストアに行けば、当たり前のように売られている。

「ブルーベリーは目にいい」という話は、多くの人が一度は聞いたことのあるレベルにまで知られているだろう。

「ブルーベリーが目にいい伝説」に登場する「猫目のカニンガム」

現在、流通しているブルーベリーの解説は、次のようなものだ。

ブルーベリーに含まれるポリフェノールの一種「アントシアニン」には強い抗酸化作用があり、血流を促進し、目の筋肉の緊張をほぐす効果、眼病予防効果が期待される。アントシアニンは、網膜の光受容タンパク質「ロドプシン」の合成を助ける働きがある。

ビタミンAも豊富に含んでおり、目を乾燥から守り、薄暗い場所に目が慣れやすくなる効果も期待できる。

科学用語を使って、それらしく説明されているのだが、以前は、次のような説がよく添えられていた。

第二次世界大戦中、高い勝率をおさめていたイギリス空軍に、ジョン・カニンガムという夜間戦闘機のパイロットがいた。彼は、ビルベリー(ブルーベリーの仲間)のジャムを毎日食べていたことで、夜目が効くようになり、敵の飛行機を見逃さない大活躍をおさめ、「猫目のカニンガム」とまで呼ばれるようになった。

イギリス空軍ではなく、アメリカ空軍とされたケースもあるようだが、大体このような夜間パイロットの話がきっかけで、ブルーベリーの効能が注目されるようになった──とされている。

ところが、この話の原典にあたろうとすると、「猫目のカニンガム」という話そのものが、完全なデマだったという事実に突き当たるのである。

泉美木蘭さんも寄稿する『小林よしのりライジング』

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