嘘ではないが壮大なデマ。「ブルーベリーは目にいい」の真相を調べて行き着いた“ガセネタの出どころ”

 

そもそも「ブルーベリー」ではなく「ニンジン」という衝撃

イギリス空軍が、夜間の空中戦を得意としていたのは事実らしいが、当時は、ビルベリー(ブルーベリー)ではなく、「ニンジンの効能」であるとされていた。

過去の戦争では、ビタミンAを含む食材を他国に供出して枯渇させたことで、国内の子供に眼病が多発した国が複数あり、経験則からも「ビタミンAは目に重要」とわかっていた。ニンジンには、ビタミンAの前駆体であるカロテンが豊富に含まれており、「たくさん食べれば夜目が強くなる」という説につながったのだ。

当時のイギリス軍部は、ポスターを制作して、「ニンジンを食え」と推進している。

灯火管制によって町は真っ暗、そのために一般市民にも「ニンジンは目にいい」が広められていた。

イギリスだけでなく、当時は、世界的に「ビタミンAを大量摂取すれば夜間視力が向上する」という説が信じられていて、日本軍も夜間防空用として「み号剤」という肝油由来のビタミン剤を服用していた。

イギリス政府のウソだった「ニンジンで夜間視力向上」説

ところが、世界を席巻した「ニンジンで夜間視力向上」という話、実は、イギリス政府が広めたデマだった。ビタミンAが重要であるのに変わりはないが、だからと言って、パイロットがニンジンを大量に食べたという事実はなかったのだ。

実は、ドイツの攻撃で食糧輸入が激減したイギリスでは、深刻な食糧不足に直面していた。そこで目を付けたのが、栽培が簡単で、保存がきくニンジンだったのである。

それまで家畜の飼料でしかなかったニンジンを人々に食べさせるために、「ニンジンを死ぬほど食べているから、わが空軍のパイロットは夜間空襲でも成功したのだ」というデマを流し、プロパガンダポスターを制作。

エースパイロットだったカニンガムを「猫目のカニンガム」として祭り上げ、「ドクター・キャロット」というキャラクターを作って活躍させたほか、「Dig for Victory(勝利のために耕せ)」というキャンペーンを張って、庭や公園、空き地を耕してニンジンを栽培させる国民運動を起こした。

実際には、ニンジンをたくさん食べても夜目がきくようにはならない。ただ、ビタミンA不足は、鳥目(夜盲症)を引き起こす原因になる。それに、国民の栄養状態改善のためにはニンジンにすがるしかない。完全なウソではないが、壮大なデマなのだ。

これによって、ニンジンは家畜の飼料から、国民を救う英雄となった。

だが、そこまでしてニンジン1を盛り上げまくった裏側には、重大な秘密が隠されていた。

そもそもイギリス空軍が夜間戦に強かったのは、パイロットの夜目ではなく、当時最新鋭だった航空用レーダーや、赤色照明を他国に先駆けて搭載していたからだった。当然、そのことをドイツに悟られてはならない。

「ニンジンは目にいい」は、戦争に勝つための重要な撹乱作戦でもあったのだ。

ニンジンをブルーベリーにすり替えた戦後ニッポン

このような事情で、戦中・戦後まもなくは「ニンジンは目にいい」が一般的に広まっていたはずなのだが、日本では、いつの間にか「猫目のカニンガム伝説」はそのままに、肝心の食材がすり替わって、「ブルーベリーは目にいい」という話に代わってしまう。

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