外務省とメディアの「共謀」による信じがたい「事件」
鳩山首相と外務省とメディアの三者関係において、同じような事案はまだある。やはりNOBORDERのスクープにより判明したことだが、それは外務省とメディアの「共謀」によるオバマ米大統領(当時)の発言の意図的な誤訳とも思える信じがたい「事件」であった。
2015年4月の第二次安倍政権当時、ホワイトハウスの中庭での日米首脳による共同記者会見に臨んでいた筆者は、オバマ大統領が「relocation of Marines from Okinawa to Guam」と語り、普天間の移設先をグアムであると確認する歴史的現場に立ち会っていた。
大事なポイントなので、その際のオバマ大統領の発言をそのまま載せておこう。
Our new guidelines complement our effort to realign U.S. forces across the region, including on Okinawa, in order to lessen the impact of our bases on local communities. And I reaffirmed our commitment to move forward with the relocation of Marines from Okinawa to Guam.
(和訳)今回の新ガイドラインは、地域全体、とくに沖縄における米軍再編の取り組みを補完し、地元コミュニティへの基地の影響を軽減するものである。そして私(オバマ大統領)は、沖縄の海兵隊をグアムに移転する計画を進めるという私たちのコミットメントを改めて確認しました。
※ ソース:2015年4月28日、ホワイトハウスでの安倍総理との共同記者会見でのオバマ大統領の発言(ホワイトハウスアーカイブ:obamawhitehouse.archives)
このようにオバマ大統領ははっきりと「マリーン(海兵隊)」の「リロケーション(再編)」先は「グアム」だと述べている。
だが、驚くべきはこの米国大統領の発言を受けた日本のメディアの報道である。
当時、NOBORDERニューズオプエドのスタッフからワシントンの筆者の元に届いた報告は、文字通りに耳を疑うものだった。東京の現地スタッフによると、NHKや読売新聞をはじめとする日本の複数のメディアが「沖縄からグアム」ではなく「普天間から辺野古」とトップニュースで報じているというのだ。
まったく意味が分からない。そんなバカなことがあるのだろうか。
筆者は疑心暗鬼のまま、もしかして自身の聞き逃しか聞き間違いを疑いながら、オバマ大統領のジェン・サキ広報官(当時)に確認した。結局、日本のメディア側の誤報だと確定するわけだが、その誤訳は、もはや意図的としか言いようのないものだった。
百歩譲って「沖縄」を「普天間」と勘違いするのならばまだしも(それでもありえないが)、「グアム」を「辺野古」と誤訳するのはどう考えても単なる勘違いでは済まされるものではないだろう。しかも、生放送を行っていたNHKだけではなく、翌朝の各紙朝刊の一面トップでの誤報だ。確認の時間は十分にある。エリート集団の日本のワシントン特派員らにとっては難しい単語ではない。
そもそも、当時のオバマ大統領は「辺野古」という地名すら認識していなかったようだ(広報官による)。プロンプターの文字はHenokoではなくGuamであったことは、オバマ大統領が「G、G、Gu、Guam」と読みに詰まったことからも明らかだ。西太平洋の同盟国の領土のひとつの小さな島の基地の名前を意図的に自国の領土のGuamと間違えるものだろうか。不自然にもほどがある。
筆者は、番組の中で「本当に恐ろしいのは(官報複合体による意図的な誤報)、当事者(鳩山氏)も知らないし、国民も全部騙されてるという恐怖ですよね」と表現した。米国での取材経験について「実際、その後に沖縄の取材にも同行したこともあったんですけど、沖縄の人は鳩山さんのことを怒っていたかと言ったら、問題を可視化してくれたと大歓迎でしたよね。当時は、日本のメディアの報道と全く逆の雰囲気だった」とも証言した。
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