日本メディアの構造的問題
メディアの構造的な問題については、Yahoo! ニュースの例を出すのがよいだろう。この決して評価の高くない、ソフトバンクという一企業のオウンドメディアを日本人は立派なニュースメディアとして扱い続けている。不思議なことだ。
「僕は日本のメディアのレベルはもっと低いと思ってて、なぜかというと、日本にはYahoo! ニュースというのが特殊な形で存在しているわけですよ。海外ではあり得ないもので、たとえばWikipediaでの匿名記載とかにも通じるのですが、日本は、ソースとクレジットを打たないメディアが唯一許されてる国ということなんですよ」
筆者は続けて「日本以外のすべてのメディア(ワイヤーサービスは除く)はクレジット・ソースを打たなくちゃいけないんですよ。ところが日本のメディアは『関係者』とか書いているでしょ」と指摘した。
Yahoo! ニュースについては、ほとんどの日本人が無自覚に受け入れている構造的かつ深刻な問題になっている。
「Yahoo! ニュースなんかは、よくみなさん、Yahoo! ニュースに載った!って喜ぶじゃないですか。当時、僕が取材した時には、Yahoo! ニュースに記者はひとりも存在しなかったんですよ。なぜかというと、他のメディアとかブログとかをYahoo! ニュースに載っけて使っていただけなんです」
実際、当時の筆者の取材した10年前にヤフーニュース編集部の記者は編集長のひとりだけだった。しかもその編集長というのは北國新聞を辞めたばかりの元校閲記者の20代の若者(当時)、所詮ネットニュースだからという軽い気持ちだったのだろうが、その影響力を考えれば恐ろしいことである(上記一連は拙著『ネットでニュースを読むとバカになる』(KKブックス)に詳しい)。
Wikipediaの匿名編集問題
Yahoo! ニュースのみならず、Wikipediaについても日本だけが世界的にも特殊な運営形態だということを、専門家も、記者も、政治家も、官僚も、日本人の多くが知らない。
「海外のWikipediaってほとんどすべて誰が書いたかってクレジットが載っているんですよね。学者さんの名前やジャーナリストの名前でクレジットを打っている。ところが、日本だけがWikipediaを書くのが、取材当時15人ぐらいしかいなくて、そいつらが匿名で好き勝手に書いているわけですよ」
筆者は番組内でこう証言したのち、さらに自身の体験を付け加えた。
「たとえば、当時、僕のWikipediaのプロフィールは、捏造された誹謗中傷ばかり書かれていたんです。敵対する記者たちが書き込んだとのちに取材して知るんですが、匿名で勝手に書き換えられるから日本では日常的にこんなことが起きていたんですね」
メディア報道において、ソース・クレジットがなぜ大切なのか。逆に言えば、なぜ日本のメディアが世界のルールを無視してでも、その原則を破り続けているのか。SNSやNoBorderのような番組が影響力を持ち始めた日本では、ようやく少なくない日本人がその輪郭に気づき始めている。
「このメディアカルテルをきちんとしたルールにしないといけませんよって、ニューヨークタイムズ時代から25年間ずっと言い続けてきました。それこそ、テレビやラジオに出ても、雑誌に書いても、新聞に書いても、言い続けていたらそこだけはカットされるか、しまいには僕自身がすべてのレギュラーを降ろされてしまったんです」









