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Yahoo! ニュースも日本版Wikipediaも。ほとんどの日本人が信じ込む巨大ネットメディアを操る“ディープステート”の正体

大手メディアにより徹底的に叩かれ、実質的な政治生命を絶たれたと言っても過言ではない鳩山由紀夫氏。しかしその裏には、「日本版ディープステート」とも言うべき勢力の力が働いていたようです。今回のメルマガ『上杉隆の「ニッポンの問題点」』ではジャーナリストの上杉隆さんが、鳩山政権を「転覆」させた外務省とメディアの関係を検証。さらにSNS時代を迎えた今もなお続く我が国の「情報の歪み」の構造について考察しています。
※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:首相を騙し続けた外務省とメディア~官報複合体の取材現場からタイトル

首相を騙し続けた外務省とメディア~官報複合体の取材現場からタイトル

筆者は25年に及ぶジャーナリスト生活において、数々の権力の現場を取材してきたが、今回のNoBorder配信の第13回「わずか8ヵ月で潰された鳩山政権―世界を支配する“ユダヤ金融資本”の正体」も、筆者の記憶を呼び起こす配信回となった。

歴代首相の中で唯一と言えるディープステート(既得権益層)との真の対決者である鳩山由紀夫元首相を招き、権力の裏側に迫った内容について、ジャーナリストとしての視点から冷静に分析したい。

鳩山政権潰しの真相 – 外務省による組織的欺瞞

懐かしくも忘れらない「事件」だ。それは今回の配信でも鳩山元総理から直接語られた普天間基地移設の真相である。首相在任中に外務省から提出された「65海里問題」に関する文書について、鳩山氏は番組中、次のように証言した。

「外務省の偉い人、課長クラスから直接渡されたのに、それは知らないということを言ってきたんです」

2010年当時、在任中の鳩山首相が説明を受けたとされる文書には「65海里、120km以内でなければ米軍基地移設の代替は無理」という制約が記されており、そのため「沖縄の真ん中から65海里だと沖縄」という地理的制約が発生し、結果的に基地移設は沖縄以外に選択肢がないという内容の極秘文書であった。

しかし、その5年後の2015年、この文書の信憑性に疑念を抱いていたNOBORDER「オプエド」チームは、取材の結果、ついに偽装文書であったことをすっぱぬく。

この大スクープにより、外務省が鳩山元首相を騙していたことが確実となった。だが、不思議なことに大手メディアは沈黙を続けた(15年が経過したいまなお)。

それは自らも誤報に加担したためだろうか、この外務省による捏造事件を報じないのだ。それどころか、鳩山元首相の存在を叩くことで自らを正当化し、いまだ多くの日本人がこの事実を知らないという有様に至らしめたのだ(拙著『オプエド』(KADOKAWA)に詳述)。

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外務省とメディアの「共謀」による信じがたい「事件」

鳩山首相と外務省とメディアの三者関係において、同じような事案はまだある。やはりNOBORDERのスクープにより判明したことだが、それは外務省とメディアの「共謀」によるオバマ米大統領(当時)の発言の意図的な誤訳とも思える信じがたい「事件」であった。

2015年4月の第二次安倍政権当時、ホワイトハウスの中庭での日米首脳による共同記者会見に臨んでいた筆者は、オバマ大統領が「relocation of Marines from Okinawa to Guam」と語り、普天間の移設先をグアムであると確認する歴史的現場に立ち会っていた。

大事なポイントなので、その際のオバマ大統領の発言をそのまま載せておこう。

Our new guidelines complement our effort to realign U.S. forces across the region, including on Okinawa, in order to lessen the impact of our bases on local communities. And I reaffirmed our commitment to move forward with the relocation of Marines from Okinawa to Guam.

(和訳)今回の新ガイドラインは、地域全体、とくに沖縄における米軍再編の取り組みを補完し、地元コミュニティへの基地の影響を軽減するものである。そして私(オバマ大統領)は、沖縄の海兵隊をグアムに移転する計画を進めるという私たちのコミットメントを改めて確認しました。

※ ソース:2015年4月28日、ホワイトハウスでの安倍総理との共同記者会見でのオバマ大統領の発言(ホワイトハウスアーカイブ:obamawhitehouse.archives)

このようにオバマ大統領ははっきりと「マリーン(海兵隊)」の「リロケーション(再編)」先は「グアム」だと述べている。

だが、驚くべきはこの米国大統領の発言を受けた日本のメディアの報道である。

当時、NOBORDERニューズオプエドのスタッフからワシントンの筆者の元に届いた報告は、文字通りに耳を疑うものだった。東京の現地スタッフによると、NHKや読売新聞をはじめとする日本の複数のメディアが「沖縄からグアム」ではなく「普天間から辺野古」とトップニュースで報じているというのだ。

まったく意味が分からない。そんなバカなことがあるのだろうか。

筆者は疑心暗鬼のまま、もしかして自身の聞き逃しか聞き間違いを疑いながら、オバマ大統領のジェン・サキ広報官(当時)に確認した。結局、日本のメディア側の誤報だと確定するわけだが、その誤訳は、もはや意図的としか言いようのないものだった。

百歩譲って「沖縄」を「普天間」と勘違いするのならばまだしも(それでもありえないが)、「グアム」を「辺野古」と誤訳するのはどう考えても単なる勘違いでは済まされるものではないだろう。しかも、生放送を行っていたNHKだけではなく、翌朝の各紙朝刊の一面トップでの誤報だ。確認の時間は十分にある。エリート集団の日本のワシントン特派員らにとっては難しい単語ではない。

そもそも、当時のオバマ大統領は「辺野古」という地名すら認識していなかったようだ(広報官による)。プロンプターの文字はHenokoではなくGuamであったことは、オバマ大統領が「G、G、Gu、Guam」と読みに詰まったことからも明らかだ。西太平洋の同盟国の領土のひとつの小さな島の基地の名前を意図的に自国の領土のGuamと間違えるものだろうか。不自然にもほどがある。

筆者は、番組の中で「本当に恐ろしいのは(官報複合体による意図的な誤報)、当事者(鳩山氏)も知らないし、国民も全部騙されてるという恐怖ですよね」と表現した。米国での取材経験について「実際、その後に沖縄の取材にも同行したこともあったんですけど、沖縄の人は鳩山さんのことを怒っていたかと言ったら、問題を可視化してくれたと大歓迎でしたよね。当時は、日本のメディアの報道と全く逆の雰囲気だった」とも証言した。

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日本メディアの構造的問題

メディアの構造的な問題については、Yahoo! ニュースの例を出すのがよいだろう。この決して評価の高くない、ソフトバンクという一企業のオウンドメディアを日本人は立派なニュースメディアとして扱い続けている。不思議なことだ。

「僕は日本のメディアのレベルはもっと低いと思ってて、なぜかというと、日本にはYahoo! ニュースというのが特殊な形で存在しているわけですよ。海外ではあり得ないもので、たとえばWikipediaでの匿名記載とかにも通じるのですが、日本は、ソースとクレジットを打たないメディアが唯一許されてる国ということなんですよ」

筆者は続けて「日本以外のすべてのメディア(ワイヤーサービスは除く)はクレジット・ソースを打たなくちゃいけないんですよ。ところが日本のメディアは『関係者』とか書いているでしょ」と指摘した。

Yahoo! ニュースについては、ほとんどの日本人が無自覚に受け入れている構造的かつ深刻な問題になっている。

「Yahoo! ニュースなんかは、よくみなさん、Yahoo! ニュースに載った!って喜ぶじゃないですか。当時、僕が取材した時には、Yahoo! ニュースに記者はひとりも存在しなかったんですよ。なぜかというと、他のメディアとかブログとかをYahoo! ニュースに載っけて使っていただけなんです」

実際、当時の筆者の取材した10年前にヤフーニュース編集部の記者は編集長のひとりだけだった。しかもその編集長というのは北國新聞を辞めたばかりの元校閲記者の20代の若者(当時)、所詮ネットニュースだからという軽い気持ちだったのだろうが、その影響力を考えれば恐ろしいことである(上記一連は拙著『ネットでニュースを読むとバカになる』(KKブックス)に詳しい)。

Wikipediaの匿名編集問題

Yahoo! ニュースのみならず、Wikipediaについても日本だけが世界的にも特殊な運営形態だということを、専門家も、記者も、政治家も、官僚も、日本人の多くが知らない。

「海外のWikipediaってほとんどすべて誰が書いたかってクレジットが載っているんですよね。学者さんの名前やジャーナリストの名前でクレジットを打っている。ところが、日本だけがWikipediaを書くのが、取材当時15人ぐらいしかいなくて、そいつらが匿名で好き勝手に書いているわけですよ」

筆者は番組内でこう証言したのち、さらに自身の体験を付け加えた。

「たとえば、当時、僕のWikipediaのプロフィールは、捏造された誹謗中傷ばかり書かれていたんです。敵対する記者たちが書き込んだとのちに取材して知るんですが、匿名で勝手に書き換えられるから日本では日常的にこんなことが起きていたんですね」

メディア報道において、ソース・クレジットがなぜ大切なのか。逆に言えば、なぜ日本のメディアが世界のルールを無視してでも、その原則を破り続けているのか。SNSやNoBorderのような番組が影響力を持ち始めた日本では、ようやく少なくない日本人がその輪郭に気づき始めている。

「このメディアカルテルをきちんとしたルールにしないといけませんよって、ニューヨークタイムズ時代から25年間ずっと言い続けてきました。それこそ、テレビやラジオに出ても、雑誌に書いても、新聞に書いても、言い続けていたらそこだけはカットされるか、しまいには僕自身がすべてのレギュラーを降ろされてしまったんです」

SNSとネットが打ち破るディープステートの構造分析

藤井聡氏は日本のディープステート構成要素として「財務省、中国共産党、在日米軍、それから医療業界、メディア、アメリカ(ジャパンハンドラー)」を挙げた。重要なのは「それぞれが自分自身の利益を最大化したいということだけしか考えていない」が、「ゲーム理論的に自動的に協調しているかのような構造が出来上がっている」という分析である。

「当時と今では全然国民の知識武装が全然違ってる。SNSもあるから調べられる」。この変化は確かに存在する。同時に情報の真偽を見極める能力がより重要にもなっている。

溝口勇児MCの挑戦

溝口MCは番組を通じて率直な認識を示している。「ディープステートの輪郭が見えてきた」としながらも「どうすればその彼らからの脱却ができるのかってのは、それはまた難しい問題だな」と認めている。

重要なのは「メディアというのがものすごく大事なんだな」「国民一人一人のリテラシーだったりしますし、本当にこうそのディープステートないしは権力に抗うとする誰にも影響を受けない真実を発信するメディアは必要なんだろうな」という認識である。

溝口は「このノーボーダーというメディア、僕たちはさらにはSNSというのをものすごく強化してる会社です。SNS上で最も影響力良くなる会社を作る」という決意を表明し、「道のりは長いなって思いました。鳩山さんも簡単に潰されちゃったわけですからね」「本当にそういう覚悟でやらなければいけないんだろうな」と覚悟を述べている。

既存メディアでは果たせない役割を補完し、SNSを基盤とした新しいジャーナリズムの可能性を示そうとする溝口の挑戦は、権力監視というジャーナリズムの本来的使命を体現するものとして評価できるし、筆者が彼に掛けているのは、こうした構造をおそらく直観的にだろうが、把握しているからである。

今回の番組が明らかにしたのは、日本の政治が複数の既得権益によって歪められている構造的現実である。今回のそれは外務省であり、メディアであった。その官報複合体によって、鳩山元総理の証言、各専門家の分析、そして具体的な事例の検証を通じて、民主主義の根幹が脅かされている実態が浮き彫りになった。

(『上杉隆の「ニッポンの問題点」』2025年9月24日号より。ご興味を持たれた方はご登録の上お楽しみ下さい。初月無料です)

※本コラムは個人の見解であり、特定の個人や団体を擁護・非難する意図はありません。

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