サッチャー氏の「女を武器」にするやり方に、嫌悪感を抱く女性もいるかもしれません。しかし、他者のまなざし(=ジェンダーステレオタイプ)に屈するのと、巧みに使うのは別。前者は自己を捨てることで、後者は自己の応援団を増やすための行為です。サッチャー氏を“鉄の女”たらしめたのは「大丈夫かしら?」といった母親のような振舞いだった。オールド・ボーイズより、一枚上手だったということでしょう。
一方で、多くの女性政治家たちが、オールド・ボーイズ・ネットワークという「決して明文化されることのない、マジョリティーである男性メンバーの間で暗黙のうちに築かれ、共有、伝承されている非公式の人間関係」に苦労し、不公平な「数の論理」によって幾度となく排除されてきた歴史があります。
このネットワークには、男性がキャリアを棒に振るような愚行を犯しても仲間が助けるのに対し、女性の場合、小さな失敗でもすぐに中傷の的にし、キャリアを奪いさる二重基準が存在します。
サッチャー氏は、最も保守的で伝統的な「男の楼閣」たるイギリス保守党という地盤でトップに立ち、強力な労働組合や野党と激しい対立を繰り広げるには鉄の女の「母性」という、無条件の愛を駆使する戦略が不可欠だったのでしょう。
さて、「日本列島を強く、豊かに」といったメッセージを掲げ、全国行脚を通じて熱心な支持者との接点を増やし、オンラインも含めた草の根での支持拡大の「勢い」を作り出し、総理の座についた高市氏は、今後どのような戦略を使うのでしょうか。
できることなら、今後はそのフットワークを日本という国に暮らす、すべての人のために生かしてほしいと心から願うばかりです。
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