高市の歓喜、麻生の暗躍、吉村の翻意、玉木の嘆息。急転直下「自維連立」真の“黒幕”と、明かされた緊迫の数日間“全シナリオ”

 

「霞が関文学」の表現を用いて維新の要求を処理した自民

新たな連立相手として高市氏が真っ先に声をかけたのは、意中の国民民主だった。だが、玉木代表は「自民と連立しても衆院で過半数に届かない。少数与党のままだ」と消極姿勢を見せた。支持母体「連合」が連立に強く反対していることもあり、高市氏は国民民主に早々と見切りをつけた。

維新の懸念は、連立によって独自色が失われ、自民の補完勢力になりさがったまま消滅へ向かうのではないかということだ。しかし、このまま野党であり続けても全国政党に脱皮できる見込みは薄い。それならむしろ、“大阪ファースト”の政党として生きるほうが、強さを発揮できる。そのためにも大切な政策は、悲願の大阪都実現につながる「副首都構想」だ。大阪が副首都に位置づけられれば、国から巨額資金を呼び込むことができる。

だが、国政政党としての建前上、これまで国会で主張してきた政策を引っ込めるわけにはいかない。維新は15日の党首会談で12項目の政策を要求、そのうち社会保険料引き下げ、企業団体献金の禁止、そして「副首都構想」を絶対条件の政策として要求した。

これが自民党にとってハードルの高い注文であることは誰にでもわかる。そもそも金権体質の自民党が企業団体献金の廃止に応じられるはずはない。

そこで吉村代表は素早く前言を翻した。絶対条件として「国会議員定数削減」を掲げ、これを約束したら他の政策についても信頼できるという謎の論理を展開し始めた。もちろん「国会議員定数削減」は“身を切る改革”として以前から言い続けているという釈明も忘れない。

「これ約束してくれるなら、社会保険料引き下げや副首都構想、企業団体献金の禁止も実現してくれるという信頼感が生まれる。すべての政策を前に進めるためのセンターピンだ」(吉村氏)

要するに「連立ありき」で、合意が成立するように運んでいるだけのことである。

両党が交わした「連立政権合意書」を見ると、「検討を行う」など実現が不確かな文言が並ぶ。肝心の「国会議員定数削減」の合意内容にしても、こうだ。

1割を目標に衆院議員定数を削減するため、25年臨時国会において議員立法案を提出し、成立を目指す。

衆院議員定数削減法案を提出することはこれで決まったといえる。が、その中身は維新の主張する「1割削減」ではなく、あくまで「1割削減目標」だ。そもそも定数削減には自民党の議員の多くが反対しているし、比例が削られるという見通しから公明党、共産党、その他小政党からの反発が強い。客観的に見て、法案の成立はきわめて難しい。

だからこそ、自民党がこの難題をすんなり受け入れ、「検討」「目標」「目指す」といった“霞が関文学”の表現を用いて維新の要求を“処理”したとみることができるだろう。

維新はもともと自民党の大阪府議が中心になって立ち上げた政党だ。保守的な政治理念では高市氏と近いが、行政のスリム化や民営化、規制緩和などを重視する新自由主義的な政策志向を持っている点では、積極財政を旨とする高市氏とは異なっている。高市氏を支持する保守言論人のなかには維新を「親中」と決めつける向きもある。

存亡の危機に瀕した二つの政党を結びつけたのは、「権力」という甘い蜜にほかならない。そこには大阪に国の資金を大量に取り込みたい維新の思惑と、麻生副総裁ら“長老”たちの利害が複雑にからみついている。維新と手を組んだとはいえ、少数与党には変わりない高市政権がさまざまな利害対立をくぐりぬけて“成果”を国民に示すのは並大抵のことではないだろう。

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