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小林よしのり氏も唖然。高市首相がトランプ相手に見せた国辱的な「異形外交」を絶賛するネトウヨに見る“敗戦国民”の哀れ

日本憲政初の女性首相に就任した直後から、ハードな外交日程をこなし続ける高市早苗氏。前任者の真逆を行く各国首脳とのフレンドリーな関係性構築の姿勢は、さまざまな方面から好意を持って受け入れられていますが、果たしてそれは「正答」と言えるものなのでしょうか。今回のメルマガ『小林よしのりライジング』では漫画家の小林よしのりさんが、トランプ大統領との会談や在日米軍基地の視察で見せた高市氏の言動を「属国的な振る舞い」として痛烈に批判。さらに国内で彼女を絶賛する自称保守界隈やフェミニズム論者の反応を紹介しつつ、自身の「覚悟」を記しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:ゴーマニズム宣言・第583回「高市早苗の異形外交」

理解できない「自称保守」の歓喜。高市早苗の国辱的な異形外交

高市早苗が日本史上初の「女性首相」となって2週間。わずか2週間で高市は、これまでの男性首相には決してできなかった異形の外交を、嬉々としてやってのけた。そして日本の国内においては、誰もこれを「異形」とは思いもせず、特に「自称保守」に至っては大絶賛している有様だ。

10月28日、高市は来日したトランプ米大統領と共に米軍横須賀基地を視察した。これこそが、今まで見たこともない国辱・異形行為だった。

まず高市は、東京都港区六本木の米軍ヘリポートから米大統領専用ヘリ「マリーン・ワン」にトランプと同乗して、横須賀へ向かった。もうここからして最大級の国辱だ。

六本木のヘリポートは、米軍が終戦後に旧日本軍の敷地を接収して作った米軍専用施設「赤坂プレスセンター」内にある。同施設は2万7,000平米の敷地内に事務所や宿舎などもあり、米軍が管理権を持ち、ヘリポートを離着陸する米軍機は航空法の適用を受けない。首都のど真ん中に治外法権の外国軍基地が置かれているわけで、これこそ日本が戦後80年を経てなおアメリカの占領下にあるという事実の証明なのだ。

周囲は高層ビルが林立する一等地で、東京都や港区は「基地の存在が周辺のまちづくりの障害になっている」として全面返還を国に長年にわたって繰り返し要望しているが、国はそれをほぼ無視し続けている。

高市はそんな米軍ヘリポートでトランプと一緒に大統領専用ヘリに乗り込み、その写真をXに載せた。

image by: X(@高市早苗

日本が完全なる属国であることを証明している米軍六本木ヘリポートから、日本の首相が米軍機に乗って飛び立つということに何の屈辱も感じず、違和感すら持たず、それどころか大喜びでやってのけ、その様子を自らXに上げて世界中に見せびらかしたのだ。

赤坂プレスセンターの全面返還をアメリカに要求するつもりなんか、さらさらないと宣言したにも等しい。それどころか、「日本は永遠の属国です!米軍様、どうか未来永劫、この首都の一等地を占領したまま、自由に使ってくださいませ!」と宣言したようなものである。

そして横須賀米軍基地に停泊中の原子力空母「ジョージ・ワシントン」における高市の舞い上がり方といったら、もう目も当てられないような有様だった。

空母の艦上での演説中、トランプが高市を呼び込んで「この女性(this woman)は勝者だ」と紹介。トランプの横に並んだ高市は何度も拳を突き上げ、ぴょんぴょん飛び跳ねるはしゃぎっぷり。

image by: X(@President Donald J. Trump

トランプは高市と腕を組んだり肩を抱いたり、そして高市はこんな表情まで見せた。

image by: X(@President Donald J. Trump

これが対等な国の首脳同士のツーショットだと、誰が思えるだろうか?まるでバブル期の成金オヤジとイケイケギャルだ。

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「高市首相」ではなく「この女」と言い放ったトランプ

今回の日米首脳会談で、高市は一方的にアメリカの得になる80兆円の投資などを約束した上に、ノーベル平和賞にトランプを推薦することまで表明し、媚びて媚びて媚びまくった。やっていることは安倍晋三と変わりはないのだが、それを女がやると、ここまで媚びへつらいや従属感が露骨に出るものなのかと、唖然とする以外になかった。

そして見逃してはならないのは、演説の中でトランプが高市を「This woman」と呼び、高市首相(Prime Minister Takaichi)とは言わなかったことだ。他のメッセージやスピーチでも、トランプは高市の名をほとんど口にしておらず、「woman」や「female leader」など、名前ではなく性別でしか語っていないらしい。

海外ニュース翻訳情報局の樺島万里子氏はXで、「女性首相を『this woman』と呼ぶのは異例だ。そこにはトランプ特有の――女性を一段下に見る癖が透けている」と指摘し、こう書いている。

――“This woman”。
この一言に、彼という人間の浅さと傲慢さが、見事に凝縮されている。

そして――
その言葉を誇らしげに受け止めて舞い上がる高市さんの姿にも、別の意味で寒気がする。
まるで、有名人に会って喜ぶグルーピーのようだ。
日本の首相としてではなく、「トランプに気に入られた女性」としての自己満足。
その“鈍感力”こそが、いちばん危うい。

この見解は、わしの感覚にほぼ近い。

樺島氏の印象では「トランプの“This woman”は『この人』というより『この女(おんな)』と言っているような響き」だという。

もちろん、首相が男性だったら個人名を呼ばずに「This man」なんて言ったりするわけがない。女だから見下しているのは明白だ。

高市に一国の首相の自覚があれば、いや、それ以前にわずかでも「個人」としての矜持があったならば、その場で「This woman, no! My name is Sanae Takaichi!」と言ったはずだ。

だが高市は大喜びで飛び跳ねた。それは樺島氏が指摘する通り「『トランプに気に入られた女性』としての自己満足」の姿である。わしがあのシーンの高市にセリフをつけるなら、「あたい、サナエは大統領から、女って呼んでもらったよ!うれピギャース!」となる。

樺島氏はあの高市の姿を「グルーピー」と形容したが、わしに言わせれば、あれはもはや「●●●●」だ。

戦後すぐ、困窮した女性は●●●●になり、米兵と腕を組み、肩を抱かれてカラダを売った。敗戦国の女は、「マッカーサー様の子供を産みたい」とGHQに手紙を書いた。そんな姿とぴったり重なって見えるのである。

もしあんな姿を、大東亜戦争を戦った英霊や先人たちが見たら、どう思うだろうか?

高市は首相に就任して早速、毎年行っていた靖国神社の秋季例大祭参拝を取りやめた。おそらく首相に就任している間は、8月15日の参拝もしないだろうが、もう高市は二度と靖国参拝などすべきではないし、英霊たちも決してそれを望みはしないはずだ。

ところが日本の自称保守・ネトウヨたちは、この媚米外交を「大成功」と絶賛したのである。

敗戦国民は悲しいものだ。自国の女が戦勝国の男に媚を売る姿を見せつけられて喜んでいる。高市早苗がトランプの子を産めば、ネトウヨはもっと喜ぶのだろう。敗戦国の女は●●●●、男は従米ポチに成り下がるのだ。

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日本の「属国的有様」を全世界に晒しまくった高市

高市は続いて韓国・慶州で行われたアジア太平洋経済協力会議(APEC)に出席。少し離れた隣席にいたインドネシアのスビアント大統領の近くへ椅子に座ったままにじり寄り、にんまりと笑いかけ、大統領は少したじろいだような雰囲気で両手を合わせてあいさつした。

そして、これも日本国内ではネトウヨたちが「陽キャ外交」などと言って褒めたたえていた。

しかし前出の樺島万里子氏によれば、これも海外のSNSを見れば「媚びてる」「場違い」「皮肉の対象」という扱いであり、中華圏・東南アジアでは最も辛辣で、「女性政治家」よりも“属国的ふるまいの象徴”として揶揄されているという。

また、高市がチリのボリッチ大統領に、顔を擦り寄せんばかりにくっつく様子も報じられた。この件はボリッチ大統領自身がXに好意的にポストしたようだが、本当にそれで良かったのかどうかはわからない。そりゃ表面上は親密さをアピールするに決まっているが、内心においては相当にナメられたとしてもおかしくはない。外交は戦争であって、パーティではないのだから。

結局のところ高市は、日本の女性はひたすら男性に媚を売らなければ出世ができないという実情と、さらには日本国自体の属国的有様を、その振る舞いによって全世界に晒しまくったのだ。

ところが、「高市総理に対し『媚びを売るな』の批判が散見されるけど、マジでやめてほしい」と言い出した人がいる。なんとそれが、山尾志桜里だ。まったくどうしてしまったのだろうか?

山尾は10月29日、Xに「トランプ訪日という機会をきっちり国益に結びつけた高市政権、お見事だと思う。サービス過多という意見もあるけれど、それを正当化するだけの結果を出したことは間違いない」とポスト。

さらに11月1日には「今回必要だったのは、何が何でもトランプ氏と良いスタートを切り、日米が固いという姿を世界に知らしめること。その意味で、高市総理は最初の仕事を見事にやり切った」とさらに絶賛した。

属国関係を強固にしただけとしか思えないあの●●●●外交のどこに、ここまでベタ褒めするだけの「成果」があったのか? わしには全くわからない。

さらに山尾は「媚びすぎ」の批判に対して、Xで10月30日に「『眼差し』とか『笑顔』とか見る人の感性でどうとでもとれる振る舞いに『女性の媚』とレッテル貼りして、一職業人を侮辱する言説には、全く共感できない」と批判した。

似たようなことを言ったのが漫画家の倉田真由美で、Xに10月29日、高市の目つきや顔つきについて「『うっとり』とか『女の目』という勝手な解釈をするのはいかがなものか。本人の内心など分からないのに、『そう見える』と決めつけるのは侮辱的な感じがする」とポストしている。

また辻元清美も、高市の対米外交姿勢には疑問を表明しつつも、「男に媚びてきた」などの批判は「ミスリード」だとポストしている。

じゃあ、ここに掲載した高市の写真を見て「媚びすぎ」と言っても、「勝手な解釈」で「侮辱」になるのだろうか?

そんなことを言い出したら、表情・態度・物腰・振る舞い・雰囲気・印象といったものからその人を判断する行為は、一切できないことになってしまう。右脳の感性・直感から来る判断というものを、根本から否定しているのである。

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決して高市を好意的に評価しなかった「あの論客」

一方、決して高市早苗を好意的には評価しなかったのが、フェミニズムの女性知識人だ。

上野千鶴子は11月1日の朝日新聞のインタビューで「女なら誰でもいいという時代では、もうありません」として、高市の政策について「選択的夫婦別姓に反対しており、政策的には、ジェンダー平等への流れをせき止めようとした安倍晋三政権のコピーのような感じです。フェミニストが歓迎する理由はありません」と語っている。

そこはまだいいのだが、残念ながら上野は「世間の序列を作ったのは男性社会ですから、そこに参入することが目的とは言えません」と言う。

既存の男性優位社会、それも最も古い体質を残している政界に女が参入して出世するには、水商売のサバイバル術よろしくあざとい媚びを振りまいて「ホステス」になるしかないという状況は、確かにあった。

そして、それに最も迎合して生き抜いてきたのが高市早苗なのだから、フェミニストが反発するのは当然である。

しかしながら、それなら上野は、男性社会の序列がまかり通る政界に女性が参入すること自体を否定するのだろうか?

男性優位社会を変えるにも、まずはその既存の社会に参入して、戦って変革していく以外にないはずだが、上野にはその発想がないようだ。じゃあ、どうすればいいというのか?

上野はこう言っている。

「フェミニズムは、女が男のようにふるまいたいという思想でも弱者が強者になりたいという思想でもなく、弱者が弱者のままで尊重される社会を求める思想です」

女も男のようにふるまうべきとはわしも思わないが、女性も男性と同等に強者になれる社会は作らなければならないと思っている。政界にももっと女性が参入し、男に媚びるのではなく、男を従える強者になれるようにしなければならないのだ。

ところが上野は「女は弱者」であり、それは決して変わらないということを前提にして、「弱者が弱者のままで尊重される社会」を作ろうというのだ。

上野は女性のくせに、女は永遠の「弱者」だと思うなんて、恥ずかしくないのだろうか?

それに、「弱者が弱者のままで尊重される社会」を作るのなら社会主義を目指すしかなく、革命を起こす以外ない。しかも革命を起こしたところで、そんな社会は絶対にできないということは、とっくに証明されている。

ここに、フェミニズムの限界が完全に露呈している。フェミニズムは社会主義と一体化し、女性を永遠の弱者と認定している。そこで上野千鶴子のように、「男並みの強さより弱者の尊重を」という主張に堕してしまうのだ。

女性が永遠の弱者だなんてことは決してない。特に日本においては、歴史上に女帝の時代が存在するのだ。 これを描き出しているのがわしの『神功皇后論』であり、その重要性はますます大きくなっていくばかりである。

それにしても、わしと上野千鶴子、どっちが「女性の尊厳」を大切にしていることになるのだろうか?

高市早苗が首相になってからSNSでは、高市に批判的なことを書けば大炎上、褒めたり擁護したりすれば大絶賛という状態になっている。

山尾志桜里も高市擁護の発言を始めた途端、それまで「不倫」の問題で叩きまくっていたネトウヨたちがみんな絶賛に転じた。今まで何を言ってもバッシングされていた山尾にとっては、さぞかし心地よいことだろう。

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再来しつつある安倍政権時代のような息苦しい悪夢の時代

だが、高市は皇統に関してはゴリゴリの男系派だ。男尊女卑に迎合して、男に媚びることだけで生き抜いてきた高市が、それを変えることはありえない。むしろ靖国参拝を取りやめた分、より強力に「男系固執」を打ち出すことは目に見えている。それも、安倍晋三がやったことと全く同じである。

皇統問題は靖国参拝と違って、いくら男系に固執しても外交関係を悪化させることにはならないから、お手軽にネトウヨの支持を固める手段として使えるのだ。

高市が首相である限り、愛子天皇への道は全く拓かれない。それどころか、男系固執をより強固にするための皇室典範改正へ向かってしまう恐れすらあるという状況になっている。

安倍晋三の「劣化コピー」とも揶揄される高市早苗だが、「この女」が首相になったことで、安倍政権が崩壊してから元気をなくしていたネトウヨたちはすっかり勢いづいた。

わずか2週間のうちにネットでは「高市のやることなら何でもOK!」のような空気が出来上がり、少しでも高市を非難しようものなら「反日」「売国」「左翼」「中国人」など、ありとあらゆる罵詈雑言が飛んでくるようになった。そして、そんなネット世論の前に「オールドメディア」もすっかり萎縮してしまっている。

安倍政権時代のような、息苦しい悪夢の時代が再来しつつある。それが、「女」を利用することによってさらに推し進められ、男尊女卑を強化し、愛子天皇への道を閉ざし、皇統を廃絶に向かわせようとしているわけだから、もう最悪だ。

しかも、安倍政権には批判的だったはずの人まで、高市にだったら好意的なのだから、絶望的ともいえる。

 

ここで戦えるのは、わしとわしの読者しかいないのかもしれない。

日本中が「高市さまは立派な外交をなさった!」と言いまくろうと、わしは今までと同じく「王様は裸だ!あれは●●●●外交だ!」と言うだけである。

他に戦える人がいないのであれば、わしが諦めるわけにはいかない。

 (『小林よしのりライジング』2025年11月4日号より一部抜粋・敬称略。この記事は一部を伏せ字にしています原文のままお読みになりたい方は、この機会にぜひご登録ください)

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image by: 首相官邸

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