「小学校4年生の娘にAIを使わせてみたが答えを丸写しするだけで終わってしまいました」と相談された、人気コンサルタントの永江一石さん。永江さんは自身のメルマガ『永江一石の「何でも質問&何でも回答」メルマガ』の中で、「算数の宿題でAIを使わせるのは無意味」と断言。その理由と、子どもがAI時代を生き抜くために親ができることを語っています。
小学生のAI活用法について
Question
いつも楽しいメルマガをありがとうございます。あるインフルエンサーの方が「AIを活用して能力を高められる人材が、これからの時代の価値を決める」とおっしゃっていました。そして、そんな人材を育成するには「小学生のころからAIに触れさせるべきだ」という意見もあり、私もその考えには共感していま
す。
ただ、実際に自分の小学4年生の娘に算数の宿題でAIを使わせてみたところ、質問力がまだ低いためうまく活用できず、結局は「答えを丸写しするだけ」で終わってしまいました。そうした体験から、やはり小学生の段階ではAIに頼るよりも、まずは基礎学力をしっかり身につけることの方が大切ではないか、とも感じています。
そこでお伺いしたいのですが、永江さんは小学生がAIを使うことについてどのようにお考えでしょうか?
永江さんからの回答
結論から言いますと、基礎学力なしにAIを使わせても、単なる「宿題丸写しマシーン」を作るだけです。「AIを活用して能力を高められる人材が、これからの時代の価値を決める」というのは確かにその通りですが、これを「基礎学力なんていらない、AIがあれば大丈夫」と解釈したら大間違いです。
例えば、ゲームしかしていない子にAIを渡しても「全部AIに聞けばいいや」という思考停止人間の出来上がりですよね。世の中で一番バカだと思うのは、疑問を持たず、デマを丸呑みする人です。
先日も「スイスは収入が日本の3倍なのに、議員年収は400万円。日本はおかしい」と騒いでいる人がいました。いや、なぜスイスの議員給料は安いの?と疑問に思わないのでしょうか。
実はスイスでは議員は立法しないので、法案は政府と官僚が作り、最終承認は国民投票で決まります。直接民主制なので、議員は片手間でOK。日本みたいに全て政治家任せではないので給料も安い。こういう背景を調べもせずに「そうだそうだ!」と言っている人は、何も考えていないんです。
AIを活用して学力を高められる子どもというのは、疑問に思うことがたくさんある子です。わたしも子どもの頃は「なぜなぜくん」と呼ばれており、「どうして空は青いの?」「どうして鳥は飛べるの?」など先生を困らせるほど質問していました。こういう子は、AIの回答を丸呑みせず、疑問を持って自分の頭で考えられます。
算数の宿題でAIを使わせるのは無意味ですが、社会や理科はいいですね。例えば、「フランスは移民が多い」と習った時「へぇ、そうなんだ」と思考停止で終わるのか、「労働力として入れたんだろう」と安易に考えるか、「フランスって植民地がたくさんあったからかな?」と歴史的背景を考えるか。
3番目の子は、大航海時代まで遡って考えるので、イギリスとフランスが世界の生みを巡って激しく争った歴史、スペイン艦隊がアメリカ大陸へ、フランスがアフリカへ向かった経緯を知っている。こういう基礎学力があって初めて、深い疑問が生まれるんです。
ひとつアドバイスすると、お子さんと話す時、都度「それはどうしてだと思う?」と聞いてみてください。うるさがられるかもしれませんが、まずは仮説を立てる練習をさせて、その後でAIに確認してみる。AIの答えも丸呑みせず、疑う。この習慣をつけることが、AI時代を生き抜く力になります。
まとめると、小学生の算数の宿題にAIは不要です。まずは「なぜ?」と問う力を育ててください。それができて初めて、AIは最強の学習パートナーになると思います。
この記事の著者・永江一石さんのメルマガ
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