放射線科医の事例が示すもの
別の例として、NVIDIAのCEO、Jensen Huangが紹介しているのが、放射線科医の仕事です(参照)。高度な画像認識ができるAIの誕生により、これまで放射線科医が行っていた「CTやMRIで撮影した画像を解析する仕事」は、AIが行えるようになりましたが、それにより放射線科医が不要になることはなかったそうです。
AIに画像解析を任せることにより、放射線科医は従来よりも多くの情報を処理できるようになったし、より高度な病理診断に時間をかけることが可能になったそうです。
放射線科医の本来の役割は病理診断にあり、画像解析はその一部でしかなかったことを考えると、AIが行える「画像解析」はAIに任せてしまうことにより、放射線科医は、より正確な病理診断を、短時間でできるようになったのです。
「本来の目的」に立ち返る発想
二つのケースに共通しているのは、「講義をする」「画像を解析する」など、これまで人間が行なっていた「作業」をAIが行うことができるようになったとは言え、それを単に置き換えてコストを削減するのではなく、コストが下がったからこそ、これまでコストゆえにできなかったようなことを行うなどして、新しい価値を生み出している点にあります。
そして、それまで、これらの「作業」を行なっていた人たちは、より高度な仕事を行うようになり、システム全体として生み出す価値は増えているのです。
もちろん、AIの導入のされ方は、業界・職種によって様々なので、必ずしも上に挙げた例のようにはならないとしても、AIの導入に際しては、常にこんな観点から網羅的に取り組むのが良いと思います。
別の言い方をすれば、単に人が行なっていた作業(教師の場合だと講義)をAIに代行させるのではなく、仕事の本来の目的(教師の場合だと、子供たちの教育)に立ち返った上で、AIをどう活用すれば、その目的をより効率的・効果的に達成できるのか、という観点から、仕事全体を見直すべきなのです。
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