恩をアダで返す中国、声を上げぬ日本。元国税調査官が考察する「誤解だらけの日中関係」と外交問題の処方箋

 

中国の若者失業率と高まる反日リスク

特に最近では、中国は若者の失業率が非常に高く国内の不満が高まっています。現在の中国は、政府の発表したデータにおいても18歳から24歳までの若者の失業率は17%に達しています。実際には20%以上の失業があるのではないかと見られ、大学を卒業しても就職先がない若者が4割もいるという統計データもあります。ネットなどでは、若者たちの不満が溢れかえっています。

中国は急速な経済発展をしていますが、それは決してバランスの取れたものではなく、先行き不安な人も大変に多いのです。だからこれから中国政府は、ますます日本に対して国内外で敵対的なプロパガンダをすることが多くなると予想されます。

日本は、中国や世界に対して納得させるようなメッセージを、全力で送り続けなくてはなりません。「自分たちは間違っていないんだから、世界はいずれわかってくれる」というような考え方は、国際外交においては通用しないのです。

高市首相の台湾有事発言にしても、質疑全体を見ればそれほど問題があるとはいえません。台湾に対して中国が武力攻撃を行い、それに対してアメリカ軍が救援に向かったような「最悪の場合」についてとしての回答だったからです。質疑全体を見ればわかると思いますが、周辺海域が封鎖されて日本の輸出入ルートも塞がれ、台湾に在留邦人が取り残されていたようなケースという、最悪のケースを想定しての回答なのです。全体の流れを見れば、「そりゃあ自衛隊も動かざるを得ないだろう」というような質疑になっています。

だから日本は中国や世界に向けて、「アメリカと中国が台湾で軍事衝突したような場合、日本はアメリカの同盟国であり、台湾の近隣国としてアメリカに協力せざるを得ない」「そうならないように望んでいるし、そのための協力は惜しまない」というようなメッセージを声を大にして発していくべきなのです。そういうメッセージならば世界のどこの国も納得するだろうし、中国も強い態度には出れないはずなのです。

中国が日本の軍事力を恐れる理由

ところで中国は、今回の台湾有事発言だけではなく日本の軍事力についてたびたび警戒する発言をしています。今回の台湾問題に関しても、中国は「日本は再び軍国主義化している」として国際世論に訴えようとしています。

これについて日本人の多くは、痛くもない腹を探られている気分になっていると思われます。「日本が他国を侵攻するなどあり得ないし、そんな軍事力も持っていない」と大半の日本国民の思っているはずです。「むしろ、あんた(中国)の軍事侵攻の方がよほど心配だよ」と。

中国は核兵器も持っていますし、陸海空軍も日本とは比べ物にならないほどの規模を持っています。軍事費だけを見ても日本は中国の5分の1以下です。高市首相の台湾に関する発言も、中国がこれほど大きな反応をするとは思わずに軽い気持ちでなされたものだと思われます。が、この件に関しても、日本側は認識を改める必要があります。中国は、日本人が思っている以上に日本の軍事力を警戒しているのです。

というのも、戦前の日本は、世界有数の軍事大国であり、英米仏など世界中の大国を相手にして戦争を繰り広げています。中国とも戦争し、中国側は当時の首都だった南京をも陥落させられているのです。中国4000年の歴史の中で、戦争において首都を陥落させられたのは、モンゴル帝国と日本との戦いだけなのです。

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