恩をアダで返す中国、声を上げぬ日本。元国税調査官が考察する「誤解だらけの日中関係」と外交問題の処方箋

 

世界初の空母保有国だった日本

軍事技術についても、戦前の日本は非常に高度なものを持っていました。たとえば、現代の戦争において重要な地位を占める兵器として「空母」があります。空母とは航空機の離発着ができる軍艦のことです。第二次大戦直前にこれが発明されるや、海上兵器の主力の座を戦艦から奪い、現在に至るまでもっとも重要な軍艦の地位を占めるものです。

空母を建造し運用するには、高い科学技術が必要とされます。船という非常に限られたスペースの中で、航空機を離発着させなければならないのだから、その構造には精密なバランスが要求されるのです。だから、空母を建造するには、相当の工業技術、国力が必要になるのです。

日本は、この空母を大正3(1914)年につくっています。貨物船の若宮丸を、水上機を搭載する母艦に改造し、「若宮」と改称して軍艦籍に入れたのです。航空機の母艦として、正規の軍艦籍を入れられたのは、世界でこの「若宮」が最初です。

それ以降、日本海軍は空母を重要な軍事アイテムと位置づけ、太平洋戦争開戦時点では、アメリカよりも空母の保有数は多かったのです。その後、アメリカは空母と航空機を大量生産したため、最終的には航空兵力で圧倒されることになりますが、開戦時点ではアメリカに引けを取らないほどの航空兵力を持っていたのです。

当時と現代では航空機等の性能に違いがあるので単純な比較はできませんが、中国が空母を保有できたのは、なんと平成24(2012)年になってからのことです。しかも、すべてを自国で製造したわけではなく、ウクライナから中古の空母を購入してそれを改造したのです。つまり、日本は中国よりも100年も早く空母を保有していたのです。

中国が日本の軍事力を恐れるのも無理はない、という面はあるのです。今、日本は憲法の制約などで軍事力を制限しているけれど、もしこれを解除すればとんでもない軍事強国になる、と彼らは思っているのです。

日本の宇宙技術を警戒する中国

筆者はケーブルテレビで各国のニュース番組などを時々見ているのですが、中国のニュース番組は、日本が人工衛星の打ち上げに成功したときなどはトップニュース扱いになります。日本ではそれほど大きく取り上げられていないにも関わらず、です。

日本は人工衛星などの宇宙技術において世界のトップクラスです。また原子力の分野においても世界有数の技術を持っています。人工衛星も原子力も、もともとは軍事技術から発展したものです。だから、いつでも軍事に転用できるのです。日本が北朝鮮のミサイル実験のニュースを苦々しく思っているのと同じような感じで、中国は日本の人工衛星打ち上げのニュースを見ているのです。

もちろん日本人のほとんどは、人工衛星技術や原子力技術を軍事転用できるなどと考えたことはないでしょう。が、軍事専門的な目で見れば、日本はすぐにでも軍事大国になる可能性を持っているのです。

その辺については、日本側も認識しておく必要があると思われます。過去のことを平身低頭して謝罪し続けるとか、高度な軍事技術をひけらかすということではなく、相手がそれなりに恐れを抱いているということをわかった上で、適切な対応を考えるべきなのです。今の日本は「中国側の強がり」には敏感に反応しますが、「中国側の恐れ」についてはまったく認識していないようなのです。高市首相の発言にも、この認識は欠如していたように思われます。

とにもかくにも、相手は何を考えているのか?をしっかり把握し、自分たちはどう考えているのか?をきちんと伝える努力をしていかないと、とんでもない災いを招いたりするのです。小さな誤解で戦争にまでなったという例は、世界史の中でいくらでもあるのです。

(本記事はメルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』2025年12月16日号の一部抜粋です。「ふるさと納税の大誤解」 「所得税調査事績にみる国税庁の愚かさ」 を含む全文はご登録の上ご覧ください。初月無料です)

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